ニンジャスレイヤーTRPG第2版シナリオ『ピザ・タキvsピザ・スキ』
これは題のごとく、ニンジャスレイヤーTRPG第2版用のシナリオ記事であり、ニンジャスレイヤー第4部スピンオフ『ラグナロク・オブ・ピザ・タキ』を原案にしたシナリオになります。
◆シナリオサマリー
対象:ピザタキに集まった3~4人のニンジャ
難易度:EASY
キャラロスト:なし
余暇:標準(4スロット)
備考:ピザがたべたくなる
PC共同ハンドアウト:
あなたたちはピザ・タキの常連である
◆ピザタキ作戦会議(ダンゴウ)
「と、いう事でピザタキ作戦会議を始めます!」
「いいぞ!姉ちゃん!」
キタノ・スクエアのこじんまりとしたピザ店、ピザタキ。
その店内で店の看板娘である『コトブキ』とバイト少年のザックがどこからもってきたのか、白く大きなボードにマジックで作戦会議と書き込み気勢を上げた。
ピザタキは元々はシケた冷凍ピザとぬるいケモビールをセルフで料理させる店として大して流行っていなかったのだが、自我を持ったオイランドロイド――ウキヨであるコトブキらが従業員として住み着いて以降、本格的なピザ窯をそろえるなどしてその味の評価は向上……今ではキタノ・スクエアのコミュニティスペースとしての役割を果たす店舗として成長した。
あなたは、ピザタキの常連であるのか、はたまた、ただ偶然ピザが食べたくなりその場にいたのかは定かでないが、どういうわけだかその作戦会議に巻き込まれてしまったのだ。
「今回の議題はこれです!ピザスキ!」
そういうと、コトブキはピザスキのチラシを、磁石クリップでボードに張り付けた。チラシには『キタノ・スクエア支店開店』『ピザが大好き』『IRC注文で2倍量』などの文字が躍る。
「うちのすぐ近くにキタノ・スクエア支店ができてしまったのは、正直痛手です。いえ、本来なら地域に根差したピザタキの営業努力があれば、互角に戦える計算だったのですが……」
「どうやら、あちらのお店に入った店長が相当の腕利きのようで、
資本と技術によって苦戦を強いられています。このままではジリー・プア―……徐々に不利です」
「あのな、チョットいいか?」
と、カウンターでエッチ・ピンナップを気だるげに読んでいた店主の男――タキが言葉を挟んだ。
「元々な、うちの商売は情報なの。ワカル?
ピザはお遊びってか、カモフラージュだってのは何度言ったよ」
「しかし、今ではピザ販売も大事な収入源になっています。
実際、先月古くなったファイアウォール機器を刷新できたのも、
ピザ販売によるところが大きいはずです」
「いや、あのな、それはアレだ。店主としてお前たちのビズの上前を貰う権利がある訳だろ。ビズが遊びめいたモンとはいえ当然のことで別にピザ販売がなくとも……」
「認めてください。計算しましたがピザタキの収入の4割程度はピザ販売が支えているはずです」
「ワーッタ! わ・か・り・ま・し・た!
で、その大事な大事なピザ収入がジリー・プアーだからって、
今度は何をするおつもりですかねえ?」
コトブキにくぎを刺そうとして言い返され、大人げなくいじけた様子のタキはため息をつきながらエッチ・ピンナップ雑誌を脇に置き不機嫌そうに議論に加わった。
「考えてみたのですが、ピザタキは地元のお客さんが大半を占めています。ですからあまり新商品を乱発するよりは、いつ行っても同じ味が食べられる安心感をウリにしていました。しかし、さすがにそろそろ新商品の一つでも開発してみるのがいいかもしれません」
「ケッ、結局はそういう発想かよ。さすがに安易だぜ」
「何もやらないよりは、やったほうがいいとおもうけどな……
実際、新しいフレーバーとかって人の目を引くと思うし」
不満げなタキをしり目に、ザックは乗り気のようだ。
「ということで、今回はお客さんもまじえてどんな新メニューを出すのがいいか、ブレインストーミングしてみましょう!」
こうして、あなた達も交えたピザタキ作戦会議が幕を開けた。
◆新作ピザ開発
「おい、ブレインストーミングするんじゃなかったのか?」
あなたたち(とタキ)はエプロンに着替え、ピザタキの厨房に立っていた。
さして広くはないが業務用冷蔵庫と、本格的なピザ焼き窯があり、
冷蔵庫の中には様々なトッピングの具材が用意されている。
「はい、ブレインストーミングです。そして実際、
ブレインストーミングで出た案をすぐ作って確かめてみようと思いまして。このオーブンなら90秒で焼成できます」
「気合が入ってて結構だが、材料費がかかってしょうがねえよ
それはちゃんとおまえらのバイト代から引いとくからな」
「はい!それではさっそくはじめましょう!
まずは……ピザ生地はどういったものを使いましょうか?」
「生地が決まりましたね!では……次にどういったソースを使うか、考えましょう!なにがいいかな……」
「ソースがきまりました!生地とソースだけのプレーンなピザもシンプルでよい物ですが、やはりピザと言えばトッピングです!トッピングを決めましょう!」
「できましたね……これは……!」
◆頓挫
「腹がいっぱいになっちまった……気持ちわりィ……
あとやっぱ、新作ピザひとつで戦況をひっくり返すってのは無理があるぜ……やるにしても、もっと別の手を考えないとな」
タキは出っ張った腹をさすりながら、ケモビールでのどを潤した。ザックなどはまだ食べようと頑張っているが、明らかに限界である。
「としても、どうすれば……」
「俺ら全員、料理に関しちゃ素人だからな。というか俺は興味がないし、お前ら二人も言っちまえば趣味でやってるレベルの素人で、料理を勉強したわけじゃない」
「それはそうですけど……」
タキの言葉にムッとした表情のコトブキ。
「まァ、待てよ。続きを言わせろって……だから逆に考えてみろ。
俺たちに足りないのは本格的なプロの技術だ。なら……プロを顧問として雇えばいい。足りないもんは外注するのが一番だ」
「……もしかしてそうしたプロに、アテが、あるのですか……!?」
「いや、ねえよ。ブレインストーミングだろ、だから俺は俺の考えを言っただけだ。そのプロをどうするかはお前らで考えてくれや」
「なんだよォ、真面目に聞いて損したぜ……」
タキの結論に不満げなザック。しかしコトブキは一理あると思ったのか考え込み……
「タキ=サンの言葉にも一理あります。これから本格的にピザを売るのですから、プロを招き入れる、あるいはその指導を受けるのは理に適っています」
「だから、ピザは偽装のお遊びだって……ああ、もう知らん」
タキは発言したことで自分の責任は果たしたと思ったのか、
エッチ・ピンナップ雑誌をアイマスクめいて顔の上に置き、ふて寝を決め込んだ。
「……協力してくれるプロを探しましょう」
こうして、ピザタキ勢のプロ料理人捜しが始まった。
◆プロを探そう
協力してくれるプロフェッショナルを探す、と言っても一筋縄ではいかない。ただ、無策に歩き回るというわけにもいかないだろう。どうするべきだろうか?
◆チラシやIRC掲示板で求人募集する
「広告やIRC-SNSでプロを募集してみましょう。もしかすると応募があるかもしれません」
PC達は求人雑誌やIRC-SNSに募集広告を打つことにした。もし、これを見たプロが店に来てくれれば万々歳だが……?
「ううん……来ませんね……」
広告を打ってから3日。プロどころか、いたずらや冷やかしの応募すら来ない。どうやらこの手段は失敗に終わってしまったようだ。そろそろ、別の手を打ってみる頃合いだろう。
◆評判のいい店に提携・指導を求める
「こうなれば……評判のいいお店に指導を仰ぎましょう。提携できれば、協力して売り上げを伸ばせるかもしれません!」
「なるほど、そりゃあいいや!」
コトブキとザックはそういうとネオサイタマのピザ屋を調べ始めた。あなた達も協力してあげよう。
「うう、ダメです。ほとんどのピザ・パーラーがピザスキの出店攻勢の前に店じまいや移転、業種転換を迫られています。これでは、提携できそうなお店を探すのも難しいです……」
◆タキにプロの情報を集めてもらう
「タキ=サン!タキ=サン!」
「ったく、お前らまだチンタラやってるのかよ……もう満足したか?」
「プロがどの辺にいるとか、わかりませんか? 情報が必要です!」
「ハァ? そういうのはお前らが調べろよ……俺はこう見えても忙しいんだ」
タキはそういうと、再びエッチ・ピンナップを頭の上にのせてひと眠りを決め込もうとしたが……
「タキ=サン! 売上増強! 商売繁盛です!」
結局、コトブキの熱意に負けて適当にラップトップUNIXを弄り始めたが……
「さすがにそう簡単にゃあ見つからねえな……特に、見ろよ。この辺のピザやなんざ大抵がピザ・スキに目ェつけられて潰されるかその傘下になってやがる。こりゃピザ職人を探すにしても手間が折れるぞ……」
「うーん……そうですか……」
結局、タキの調査ではプロのピザ職人は発見できなかった……
◆板前のアキジの登場
「…………お邪魔いたしやす」
その時であった。
「イラッシャイマセ!」
ピザタキに一人の客が現れた。白い割烹着を着たイタマエ風の男である。コトブキは笑顔を浮かべそれに応対した。
「ドーモ。こちらで料理人を募集していると聞き、僭越ながら敷居を跨がせていただきました。あっしで力になれる事なら、と……」
男は、奥ゆかしく礼をする。それにつられてコトブキ、ザックも礼をした。
「まあ! 料理人の方ですか!」
コトブキの顔がほころぶ。ようやく、方々に手を尽くした甲斐が実を結んだ。
「はい、イタマエのアキジと申します。本業はイタマエでして……ピザの方は詳しくありませんが、鮮魚関係ならいくらか力になれるかもしれないと思い……」
「ケッ、スシ・ピザでも作ろうってのか?」
カウンターの奥で、タキが挑発的に言い放ったがアキジは奥ゆかしく頭を下げるばかりでタキはそれを見て居心地が悪そうに居住まいを直した。
「とりあえず、まずは面接です! アキジ=サン!
あなたの考えるピザという物を作ってみてください!」
コトブキは気にせず、アキジに声を掛ける。
「ハイ。それでは厨房の方、お借りします」
イタマエのアキジは、初めてのピザ作りに挑む……!
「……いかがでしょう」
イタマエのアキジは、冷蔵庫に残されていた残り物のような材料でピザを焼き上げた。
「す、すごいです……!」
「う、うめえ……なんだこりゃ!? これ、うちのピザか!?」
コトブキは目を輝かせ、ザックは一心不乱にピザにかぶりついている。あのタキですら、目を見開きピザを口に運んだ。
「どんな材料にも……材料独自のよさがあるんです。それを邪魔せず、引き出してやるのが『和』の料理です」
アキジは包丁を布巾でぬぐいながら、恭しく頭を下げた。
「アキジ=サン! 合格です! いえ、ぜひうちで技術指導をお願います!」
コトブキは頭を下げ……
「頭を上げてください。こちらこそ、ピザの奥深さ学ばせていただきます」
こうして、あなたたちも一週間ほど、アキジの指導を受けることとなった!
◆ピザ・スキ登場
あなたたちは、みっちりとアキジの指導を受けた。あなた達がミスをしてもアキジは決して声を荒げることも、手を出すことも、叱責することもなく根気強く自身の『ワザ』を伝授し続けた。
その結果、あなた達のニンジャ器用さも相まってひとつの技術は多少なりとも形になった。
「この調子でいけば、ピザ・スキの新店進出にも耐えられるかもしれません!」
「やったな、姉ちゃん!」
コトブキも自信を深め、ぐっとこぶしを握る。ザックも嬉しそうだ。
その時であった……!
「ほう、我がピザ・スキを舐めてもらっては困るな……?」
現れたのは、スーツにメカニカル鉄仮面と言う異様な風体の男である!
「ドーモ、ピザスキ社特殊営業課。ディーン・ノミタケと申します」
男は名刺を差し出しながらオジギ!完璧な礼!しかしながら威圧的なアトモスフィアを隠さない!
「ドーモ、ピザタキのバイト。コトブキです」
しかしコトブキは気圧されることなくその名刺を受け取り……
「ピザスキの営業さんが一体どのようなご用件でしょうか……?」
明らかに商売敵の視察に毅然とした態度で対応!
「このたび、私はピザスキ・キタノスクエア店の店長を任されましてね……正直言って、今回の出店はこの『ピザタキ』を潰すか、傘下に収めるため。それはあなたもお分かりですね?」
「……単刀直入に言いましょう。我がピザスキとの『ピザ勝負』を受けていただきたい……!」
「ピザ勝負……!」
ピザ勝負……こうした店舗間での『勝負』はネオサイタマではまれに行われる。遺恨や対立関係に決着をつけるための『決闘』であり、その敗者は恥を受けるだけではなく、実際負け犬として扱われほぼ例外なく廃業やセプク、膨大な借金を抱えカニキャッチ漁船行きの憂き目にあうという……!
「いいでしょう……! ピザ勝負、お受けします!」
コトブキは、それを真正面から受けた!
「ちょっ……何勝手に決めてんだ……!?」
タキは慌てて止めに入ろうとしたが……
ディーンは、鉄仮面の下でほくそ笑みながらその手に握った『テープレコーダー』を見せた
『いいでしょう……! ピザ勝負、お受けします!』
レコーダーから再生される、コトブキの声!
「言質はとった。もはや勝負に二言は許されんぞ。ピザタキ!」
「あ!」
憎悪の視線でコトブキを睨みつけるディーン!
タキはもはやしらねえとばかりにすごすごとカウンターに戻るばかりであった……!
◆ピザ勝負
ピザ勝負の日はすぐにやってきた。キタノ・スクエアの広場はピザ・スキによってピザ勝負用のブースが設営され、満員の観客がいまかいまかとその始まりを待っている。
会場にはピザスキのテーマEDMサウンドが流れ、そこかしこにピザスキのブースへとそれとなく誘導するような導線が仕込まれている。しかしそれだけではない。本社からの応援一流自我研修済みスタッフまでをもそろえ、材料も今日のために調達した、最高級の普段は使用しないオーガニック素材をそろえてある。ディーン・ノミタケは本気でピザタキを潰すつもりだ。
対して、ピザタキ側はコトブキ、ザック、アキジ、そしてあなたたち。
「………………」
コトブキとザックは、緊張と不安からか表情が重い。
「コトブキ=サン、ザック=サン。我々はいつもやってきたことをやるだけです。この一週間の修練は決して無駄ではありません。いつも通りに……」
そんな二人を気遣ってアキジは声を掛けた。
「……ハイ!」
コトブキは意を決して、それに答えた!ピザ勝負が始まる!
◆ピザ勝負本番
「それではこれより、ピザタキvsピザスキのピザ勝負を行います!」
「ワオー!」「ウォーッ!!!」「ヤッター!」「早く食べさせろ!!!」
腹をすかせた観客たちはすでにボルテージを上げている!
この勝負では集まった観客たちにピザを提供し、制限時間内にその提供数が多い方が勝利する!
「観客の皆さま、投票券はすでにお持ちになりましたね!?
では、さっそくですが勝負開始です!!!」
実況のアナウンスンと共に、コトブキ・ザック・アキジ、そしてあなた達は調理のためのブースに駆けだした!
◆戦いの終わり
プアー!
「そこまで!」
制限時間終了のホイッスルが鳴り、両陣営が作業を止める。
「「アリガトウゴザイマシタ!!!」」
コトブキ、ザックらは汗をかきながらも笑顔で集った客にアイサツ。作業中は客がどの程度集まっているか見る余裕すらなかったが、どうなったか……
あなたたちはキタノスクエア大型ディスプレイを見やる。
ピザタキ:||||||||||||||||||||||519
ピザスキ:|||||||||||||||||||||502
僅差ではあるが、ピザタキの提供数が上回っている!
「バカナー!!!!」
ディーンはこの結果に驚愕!しかし、客はピザスキではなくピザタキを選んだのだ。これが現実だ。その場に両手をつくディーン。
「や、やりました!やりましたよ……アキジ=サン!」
喜びを爆発させるコトブキ。
しかし、すでにアキジの姿はない。
「アキジ=サン……?」
そう、アキジは店を持たぬ流浪のイタマエ……
少し離れた場所で、アキジはきょろきょろとあたりを見回すコトブキを見ながら微笑んだ。
「あっしの技術は、伝えました。これでしばらくは安泰でしょう……オタッシャデ、ピザタキの皆さん」
アキジは、再び流浪の旅に出た。
こうして、ピザタキとピザスキの戦いは終わった。