月棺

遠雷の 打ち始まりが
そっと息する 窓ぶらす
薄明を やさしい棺の薄明を
空白が噂する出窓に

希釈電波と糸 螺旋
ほどけ目ひとつ ほつれてふたつ
そこから覗く 蠍の目
葬火の襲 輪終とハレ

迷子さん 迷子さん
知らない蠍の迷子さん
あなたの羽をひらつかせ
天使は舞い 山羊さんはダンス
くるくるまわる 線を降りれば
あなたはあなたへ落ちていく

なぞる棺と拉ぎ指
目覚めた出窓 重なる火先
薄明辿って飛び出して
白装束の蛇腹折り
赤星昇る 果実は輪る
わたしはわたしへ手を伸ばす

遠雷は彼方  折り目から空

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