絵本『だれでものいえへ』ongoing project vol.08
クライアントがやってきた01
浜園さんのこと
2023年の年の暮れ。浜園さんが新井の自宅仕事場を訪ねてきました。
依頼は『こども食堂のパンフレットを作って欲しい』とのことです。
浜園さんとは昔、同じお店でパートタイマーをしていた縁で知り合いました。
早朝に大きな釜でご飯を炊いて、まん丸なおむすびと日替わりのお味噌汁を作る仕事でした。
浜園さんが仲間たちと『こども食堂』を作る
浜園さんは高齢のお母様と旦那さんと2人の娘さんとワンコと草加で暮らす一級建築士です。
下の娘さんはダウン症。
自らの建築事務所『舞香』を運営しながら、月に1回の『こども応援団マイカ』による『こども未来食堂マイカ』を主催しています。
学童保育に入れなかったこと
『こども応援団マイカ』の始まりは娘さんが学童保育に入れなかったことだと、浜園さんは話します。
当時同じように学童に入れなかった仲間たちと、これではいけないと立ち上がり、『地域でこどもを育てる』を理念に掲げ、こどものための場所作りとして、まずは『こども食堂』を作ったのでした。
(その経緯も一筋縄では行かない難関の数々が、もちろんありました)
自分のこどもが学童に入れない、だからこども食堂を作る
この話を聞いたとき、わたしは正直言って、それってものすごく遠回りな道なのではないかと思いました。
わたしだったら、自分のこどものために緊急的な応急処置に走ってしまう。
学童に入れない自分のこどもの小学校6年間をどうするかって考えて、自分の家のことだけを手当してしまうと思う。
でも浜園さんと、その仲間たちは違ったんです。
「うちのこどもは、一番最後に並んでいる」
「ダウン症を持つうちの子は、社会構造の中で言えば列の一番最後に並んでいるという現実がある。
だから、うちの子が地域で居場所を持てるようになるためには、まずは地域のすべてのこどもが居場所を持てる(その先として就労できる)ようにならなければならないの」
浜園さんは言います。
「だから『こども未来食堂マイカ』を作っただけではダメで、
まずは草加市の全ての学区域に『こども食堂』が、なくてはならないの」
更にそれぞれの『こども食堂』が単体で運営しているのではなく、繋がりあって、こどもを誰ひとりとして取りこぼさないようにする。
そして立ち上がったのが浜園さんが代表を務める『こども応援ネットワークPine』です。
『こども応援ネットワークPine』のこと
こども応援ネットワークPineは草加越谷地区の24箇所(2024年8月時点)の、こどものための拠点と活動を繋ぐネットワーク。
繋がることで、寄付(こども食堂のための食材)や情報(こどもに関する社会的地域的動き)を共有しています。
そして大切なのは各拠点に訪れる個々のこどもたちの問題の共有。
各拠点の個性に合わせて、こどものためにできることを提供できるようになっているのです。
つづく
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2024/09/18
ペレカスブック新井由木子
記事の制作公開は、編集者土井章史さん、クライアントこども応援ネットワークPineさんのご了解をいただいています。
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記事:ペレカスブック店主イラストレーター・デザイナー:新井由木子
ペレカスブックは埼玉県草加市の小さな書店。
実店舗は2023年5月にクローズ。新店舗を持てるように奮闘中です。
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