絵本『だれでものいえへ』ongoing project vol.17
カラー作画に苦心する
カラー作画と方眼作画をいったりきたりする
さて元々ですが、わたしはこういう絵で仕事をしてきました。
これは最高に好きな仕事でした。
紙の上にコーヒーを落として、その偶然性で描いていくような感じ。
ぶ厚い文芸誌をペラペラとめくったときに、読者が目を止めてくれるように、印象が残るように意識しながら描いていました。
作家の作る物語へ続く異世界への扉を描く。が座右の銘でした。
ですが、、絵本の絵となると、そうはいかないのです、、、。
絵の中にちゃんと重力がなければならない感じ。
そうではない素晴らしい絵本もたくさんあるけれど、特に今回の絵本は、おばけのこどもの進む道にリアリティがなければならないのです。
そして、、、モノクロで文芸誌の挿絵ばかり主に描いてきたわたしには、カラー作画の経験値が圧倒的に低いのでした、、、。
なので、カラーの習作も必要になってきます。
vol.15の方眼紙への下書きと並行して、各ページのカラーの習作をしていきます。
方眼紙に描いた下書きが、彩色しても成立するかどうか、、、。
カラーで描いてみて、方眼紙の下書きを直してみる。
水彩紙+アクリル絵具作業と方眼紙+鉛筆作業の間を行ったりきたりします。
こどもの頃からそうなのですが、わたしは絵本を見るときに物語の本筋よりむしろ、背景とか物語の筋から外れたちょっとしたシーンに興味が湧くので、この時もおばけの進む『町』をどうするかにこだわっていました。
サーカスの町とか、遊園地の町とか、、、。
作家の『気分』
5月の末まで、迷いながら描き続けた各ページを持って編集者土井さんの元へ。
町はもっとフラットでグラフィカルな方向にしようということになりました。
読むひとが見るのは『おばけ』なので、背景はすっきりと。
また、緑の野原の表現が「これは作家の『気分』だから、このままで良い」と言ってもらえたのが意外でした。
描き手のわたしから見ると、編集者は作家の仕事を世の中に届けてくれる技を持つ人というイメージですが、『編集者から見た作家』というものが、編集者のなかにあるんですね、、、。
それはどういうものなのか、描き手にはもしかしたら一生わからないものなのかもしれない。
2024年3月から5月いっぱいまで、カラー作画の習作にあけくれていました。
それを反映したのがvol.15の方眼紙の下絵になったわけです。
そして6月は離島に住む老父母のお世話で、絵の仕事は一時ストップ。
7月から、本格的に本番用の作画に入ります。
つづく
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2024/10/17
ペレカスブック新井由木子
記事の制作公開は、編集者土井章史さん、クライアントこども応援ネットワークPineさんのご了解をいただいています。
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記事:ペレカスブック店主イラストレーター・デザイナー:新井由木子
ペレカスブックは埼玉県草加市の小さな書店。
実店舗は2023年5月にクローズ。新店舗を持てるように奮闘中です。
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