身体のチカラ・記憶のチカラ 〜手術から5ヶ月経って〜
今日、薬の副作用で脱毛してから、初めて、帽子を被らずに出掛けた。
といっても近くのスーパーまでで、まだ知り合いにこの頭で会える気はしないけれど、知らない人が見たら「ベリーショートにしているのかな」と思えるだろうくらいにはなってきた。
手術から5ヶ月、術前の抗がん剤治療を終えてから半年弱。少しずつ戻ってきた髪の毛は、でもまだ短くて、『スピード』のキアヌ・リーブス(古い)より少し長いけれど、全然伸びてこない前髪に関しては、アレンジができそうな慎太郎刈り(古い!)よりもまだまだ短い。
それでも、スーパーまでの道のりは、久しぶりに髪に日の光や風を直接浴びて、ちょっと嬉しいお散歩になった。
こんなふうに、また一つ解放されていっている。
それから、昨日から、リハビリの回数を減らすことにした。朝・昼・夜の日に3回やっていたリハビリを、朝晩の2回にすることにしたのだ。
全摘をした右胸の傷の回復は順調だと思う。
斜めに一直線の12センチほどの線。まだ赤みのある濃いピンク色で、多少突っ張ることはあるものの、よく伸びて動くし、痛みもない。
手術の後、一直線の下側の端っこは、まるで見えないコマ結びでもあるかのように、ころっとした硬い部分があったけれど、今はそれもあまり気にならない程度になってきた。最後までかさぶたが残っていた上の方の端っこは、まだ硬い部分が残っているけれど、それもそのうちにきっと馴染んでくるだろうと思う。
カラダは着実に回復してきている。
「回復力のすごさ」を改めて実感する。
◇ ◇ ◇
右胸の一直線の傷を見ると、思い出すことがある。
ずいぶん前に、全摘をした外国の人の写真を見たことがあった。Facebookの初めの頃かなにか、少なくともガラケーではなく、スマートフォンで見たと記憶している。
バレリーナのような人の両胸の全摘写真。中年といっていい年齢の人だったと思うけど、今の私よりもずっと若い人だったに違いない。
モノクロの写真には、両方の胸の場所に傷跡のまっすぐの線があるだけ。綺麗だと思ったことを覚えている。
右胸を手術するとき、悩んだけれど、全摘を選んだ。その写真が、全摘することにも勇気をくれたかもしれないと思う。
どこの人かも、名前も知らない人だけれど、ありがとう。あなたの写真が、遠い日本の、何年も経ったあとの乳がんの私にチカラをくれたかもしれない。