6割の日本人は日本国のアンチである
本題に入る前に、ひとつ思い出してほしいことがある。新型コロナ対策で国民に10万円の定額給付金が配られたのを覚えてるだろうか。みんな、あの10万円は何に使っただろうか。僕はニンテンドーSwitchを買うのとスマホの機種変更に使った。スマホはSONYのXperia。
貯蓄に回した?あっ……☺
■日本人は金融オンチである
この話だけ軽く触ったら本題に入るのでもう少し付き合ってほしい。定額給付金の意図は、使って経済を回せという話なのに貯蓄に回す家庭が多くて、当時の麻生大臣が「日本人は金融経済をわかっとらん」と嘆いていた。しゃーないっす。これは日本人の金融リテラシーを信じてカネをバラまいたのが悪い。
マクロ経済の話をここで始めると本題から逸れる上にクッソ長くなるので、それは機会があれば記事にまとめるかも。ここで言いたいのは「カネの使い方はちゃんと考えなさい」ということ。
以下、本題。ここからAppleとiPhoneの話が続くんだけど、この話が日本人の金融経済オンチと関わってくるので最後まで読んでみてほしい。たぶん「ナルホド」と思ってもらえるのでw
■iPhoneを使うと産業が衰退する
カギとなるのは「トラッキング」機能。これは元々スマートフォン全般に備わっているもので、ユーザーがどんなウェブサイトを見ているかなどの情報を追跡して、ユーザーの年齢層や好みといったデータを集積した上で、正確にターゲティングした広告を表示するのに使われている。ユーザー側にとっては自分の情報を勝手に抜かれているようで気分が良くないのだが、これ自体は不正に利用されてるわけではない「と言われている」ので、一応安心していい。
で、AppleはiPhoneのソフトウェアを変更して、このトラッキングを設定画面からオフにできるようになったんだけど、実はこれが問題になっている。簡単に説明すると以下の通り。
AppleがiPhoneのトラッキングをオフにできるようにした→ユーザーの7割が機能をオフにした→トラッキングがオフになると広告の最適化ができず、狙ったユーザーに届かなくなる→宣伝効果が下がってAppleのプラットフォーム上に広告を出してる企業の売上が減る→企業がターゲット層に広告を届けるために、さらに余計なコストがかかる→ということはAppleに関わってると企業の業績が悪くなる
例えて言うならバナナ大好きゴリラくん🍌🦍が毎日iPhoneで果物屋さんとかバナナ農園のウェブサイトを見てるとして、従来であればトラッキング機能が彼の「バナナ食いてぇよ~🍌🤤💕」という心理をキャッチして超絶おいしいバナナを扱ってるECサイトとかの広告を正確に届けてくれたんだけど、トラッキングがオフになるとバナナを求めてる人にバナナの広告が優先的に届くという仕組みが崩れて、農園や果物屋さんはゴリラくんにバナナの宣伝を正確に届けることができなくなる、ということ。
ちなみにこれで最も打撃を受けたと言われているのがFacebook(Meta)で、ここは広告による収入が売上の98%を占めていると言われてたんだけど、iPhoneユーザーの7割がトラッキングをオフにしたおかげで売上と株価が落ちてしまった。Meta社の株価がガタ落ちした原因は会社自体のガバナンスにもあるんだけど、大きな要因のひとつとしてiPhoneのトラッキングが関係しているってことは念頭に置いておいてほしい。
■Apple対Facebook
そもそもAppleはなぜiPhoneのトラッキングをオフにしたのか?この問題を遡ると、AppleとMeta社の対立に行き着く。
Appleは元々、Metaに対してFacebook上で得ている広告収入の分け前を求めていた。これはiOSというプラットフォームを利用している以上Appleも広告収入の一部を得る権利があるという主張。一方、Metaは「ウチで集客してるしFacebook自体ウチで作ったアプリなんだから分け前を寄越す理由はない」として、Appleの要求を突っぱねていた。
これに関してApple側の提案として、Facebookで広告のつかないサブスクモデルをやって、その売上の一部を要求するという方針もあった。Metaはこれも突っぱねている。Metaの言い分としては「そもそも他にも広告出してる会社あるのになんでウチだけ?」というのがあったんだけど、Appleから見るとFacebookのビジネスモデルはAppleに収益を1円ももたらしていないので、これを問題視していた。だから広告費の一部、またはサブスク課金額の一部を求める動きをしてきた。
App store上でダウンロードできるアプリで課金が発生すると、その3割がAppleに行くようになってるんだけど、Facebookにはそもそも課金要素がないので、iOS上でどれだけFacebookが使われてもAppleは得をしない立場だった。だからMetaに対するアタリが強くなったという話。
なお、Meta以外の企業、例えばGoogleはAppleに対し年間数十億ドルを支払うことで利害関係を構築し、許されている。
ちなみにAppleと逆の動きをしているのがマイクロソフトで、ここはサービスをオープンソース化して5%だけ手数料くれればいいよという提案をしている。これは「今後の社会はみんなで儲けなきゃだめだよね。だからウチは大きく利益を取ることはしないよ」というステークホルダー資本主義の思想に基づいている。ただ、これにも裏はあるんだけど今回は触れずにおく。話が長くなっちゃうのでw
あと、2社が対立している原因が実はもう1つあって、これを軽く説明したら次の話に進むのでもうちょっと我慢してほしい。
2018年にイギリスで報道された話で、Facebookが保有しているユーザーの情報が不正利用されて政治がコントロールされた事件があった。ひとつは米国大統領選、もうひとつはイギリスのEU離脱。
ということがあったので、Appleは追跡機能をユーザーの意思でオフにできるようにして、安心感を与えた。この流れでFacebookがターゲティング広告を打てなくなって打撃を受けた。Appleの立場で見たら、元々収益を上げていないFacebookが情報の不正利用で政治のコントロールに加担してしまったとなれば、野放しにはできなくなる。
Metaは今、iPhoneの追跡機能に頼らない独自のシステムを開発してるらしいけど、果たして間に合うんですかねこれ……
■欧州では脱Apple運動が行われている
欧州では、と言ったけど実は日本を除くアジアでもApple離れが進んでいる。理由は上述の通り、iOS上だと広告のターゲティングができず企業の業績が下がるのと、タックスヘイブンによる税逃れ問題。元々タックスヘイブンの件があって、これらの地域では2017年頃から脱Appleが進んでいた。
世界的にiPhoneのシェアが2~3割程度に過ぎないのは、こういう理由による。日本はなぜか6割iPhoneユーザーだけど、こういうこと絶対理解せずに使ってるよね……?
さっきのバナナ大好きゴリラくん🍌🦍の話に戻るけど、彼がトラッキングのオフになったiPhoneを握りしめてどれだけ世界の中心でバナナへの愛を叫んでも、彼の端末に最適化されたバナナの広告は届かなくなる。例えばゴリラくんが興味を示さない英会話教材の広告ばかり表示されても、ゴリラくんがそれを買う気になる可能性は低いよね?ってことはバナナの売り手も英会話教材の売り手も誰も得しないよね?って話
結論
はい、お疲れ様でした。
繰り返しになるけど日本以外のアジアと欧州がiPhoneから離れてる理由は、Appleの税逃れと、自国の産業が育たなくなること。どちらも自国の経済を守るためなのは理解できると思う。
で、給付金の話に戻るんだけど皆さん、何買いました?ちゃんと自国製品を買いましたか?僕はニンテンドーSwitchとSONYのXperia買いましたよ?冒頭に書いたアレにも実は意味があったのよ。国内で回ってない現金を一般人に回してもどうせiPhoneとか買っちゃうか貯蓄に回すかだから、そりゃあ経済なんか良くなるわけがないよね。
今の日本は外貨を稼がないといけない状況に置かれてて、iPhoneを買うってことはそれと真逆のことをやってるわけで。たまには自分のカネの使い方を考え直してみてもいいんじゃないかなと。
ゴリラくんには、ちゃんと国産のバナナを食べるように言っておきます🍌🦍💕