”自立”と”お世話”とパートナーシップ
パートナーシップを専門分野とする組織コンサルタントのHOSUです。
今日はパナソニック創業100年を記念して東京国際フォーラムで開かれているCROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018に来ています。改めて、日本が誇る松下幸之助さんのリーダーシップもさることながら、彼の偉業をまとめた動画を食い入るように見ている大人の姿を通して、彼が世界に与えたインパクトの大きさを実感中です。
早く一人前になってほしい
子育てでも言えることですが、例えばクラブに新しく入ってきた部員や、会社に新しく入ってきた社員に、一日でも早く一人前になってもらいたいと願うのは、自然なことですよね。
子育ては、まぁ、心身ともに成長していくプロセスだから、できないことができるようになっていくには、時間もかかることもありますから、少し長い目で見ることもできるかもしれませんが、新しく会社に入ってきた社員には、そんなに長い目で見れなかったりしますよね。
最初のうちは、基本的な仕事の流れだったり、使用する機器の扱い方など、仕事が一人前にできるようになる(自立する)ために、必要なことを教育します。そこから、徐々に関わる量を減らして、自分でやってみて、失敗して、気づいて、学んで・・・という成長を見守る、つまりティーチャーの立場からコーチの立場へと切り替えていくでしょう。
この「教える」段階から「見守る」段階へ移行するタイミングというか、見極めを失敗すると、先輩社員にとっても、新入社員にとっても、悲劇になってしまいます。
「手取り足取りは成長を妨げるから、手を出しすぎない」
わたしは、かつて、以下のような先輩社員を何人か目撃してきました。
「社会人たるもの、一度教えられたら、あとは自分でわからないことは調べたりして、成長していくべきだ」
「わたしの時は、誰も教えてくれる人がいなかったから、社外の人も含めて、いろんな人に教えてもらって、自分で勉強したものよ」
「わからないことがあるなら、自分から訊くべきでしょう? それを“わからないことある?”って、他の人が訊いてあげるなんて、過保護だわ」
たぶん、この考え方は間違っていないんでしょう。だって、そう言ってる人は、それで成長してきているから。というよりも、「正しい/間違っている」という軸でとらえると、まずいことが起きるでしょうね。
「正しいかどうか」ではなく、それが「適しているかどうか」が、人が成長する上で見逃してはいけない軸だと思うんですね。
人の学習スタイルも様々ですし、得意なことや不得意なことも人ぞれぞれです。だからこそ、教える側の先輩社員からして、「これは手取り足取り教え過ぎ」と捉えていても、それなくして技術を習得していけない人もいると思うのですね。
そうすると、そこで「手を出しすぎない」という関わりは、新入社員にとっては「見放された」という体験になってしまう可能性が出てきます。このご時世、それをハラスメントと捉えられても、不思議じゃないですよね。
成長のしかたを勝手に決めない
昔、なかなか言ったことが実行できない社員がいました。
その社員は、ひとつのことをやると、それに気が行ってしまって、全体に気を配るということができなかったのですね。だから、3つの課題を1回の仕事で出してみても、一つか二つはやり残してくるんですね。
「言ったよね? なんで?」
「何回いえば、わかるの?」
そんな言葉を、強く伝えてみたところで、ポカんとした表情をしていて、イライラは解消されないし、何より相手が仕事でミスを繰り返すという結果も変わりません。
なので、「どうしたら、伝えた注意点を忘れずに、やれるだろうか?」という会話をしっかりとしました。過去を一緒に振り返り、解決方法を提案したりと、ある意味、「手取り足取り」でした。
でも、よくよく考えたら、「成長のしかた」をこっちが勝手に決めるから、過保護だの、放任だのという話になるんじゃないでしょうか。
わたしも、相手も、成長を望んでいる。仕事のミスがないようにしていきたい。その意味で、共通する意図に向かうパートナーなんですよね。
そんなパートナーの「成長のしかた」を勝手に決めるのって、パートナーシップに欠ける行為だなーと思うんです。
「あんたの教え方が悪いんだよ!」と新入社員が言うのと、「これで覚えられないなんて、どうかしてるよ!」と先輩社員が言うのって、同じ質でしょう? 教え方や成長のしかたを一方的に決めつけてるコミュニケーションなんだから、どちらもパートナーシップが欠けていますよね。
さすがに新入社員がそんなこと言わないだろうけど、実のところ、思われているかもしれません。
なんで、みんな、一緒に考えないんだろう?って、ほんと、思います。