すり硝子の奥に
2024.05.14
ぺぎんの日記#44
「すり硝子の奥に」
23:00
家族が皆寝静まるのを待って、お風呂に入る。
浴槽。
凪いだ水面を叩く。
チャポンと、くぐもった音が響く。
お風呂という空間はどこか異質。
そこだけ普段の家から独立しているみたい。
タイルの床。カビの生えた壁。プラスチックの天井。
湯気。水の匂い。温かい。
お風呂のドア。すり硝子。
その奥に、何か違う世界が広がっているように思えてならない。
普段の家じゃなくて、もっと汚くて、もっと狭くて、もっと小さな通路が沢山あって。
なんというか、複雑な構造のアパートみたいな。
スチームパンクな世界観に憧れたりする。
ゆっくりと、浴槽から上がる。
ゆっくりと、すり硝子のドアに手をかける。
淡い期待を抱きながらドアを開ける。
いつも通りの我が家の脱衣所が、そこにはある。
今日は早く寝よう。そう決める。
今度は夢に期待する。
私を違う世界に連れてって。