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華奢な箸

2024.08.12
ペぎんの日記#129
「華奢な箸」


ちょっと高級げな和食屋さんで、やたら細い箸を使った。

赤い丹塗りの箸。細くてデザイン自体はシンプルなのだけれど、その細さ故に繊細な美しさを放っている。こういうのを華奢と言うのだなと、このとき思った。

その細くて赤い箸は、使ってみると意外に剛性が高く、思っていたより全然使いやすかった。

むしろ、普通の箸よりも箸として優秀だったかもしれない。

まず動きが俊敏。たかが箸の細さと思うだろうが、しかしこれがだいぶ違うのだ。箸を開こうとする前に箸が開くような、その動きの軽さに戸惑う。あまりにも俊敏に動くもんだから、箸がバタバタしてしまう。でもそれも、少し使って慣れてしまえば、自分が動かそうとするよりも早く、小気味よく箸が動いてくれるので、段々と箸を扱うのが楽しくなってくる。

あと、食材の感覚がダイレクトに伝わってくる。手で持つ部分が細いため、普通より圧力がかかる。固い食材は固く、柔らかい食材は柔らかく、びっくりするくらい持ち手に伝わってくる。重いもの、軽いものもはっきり分かる。今まで食材のステータスをどれだけ無視してしまっていたかを思い知らされた。

華奢な箸。
ただ細いんじゃなくて、箸が細いことには意味があるのだと。

華奢の「奢」と「箸」という字がよく似ていることも、偶然じゃないのかも知れない。

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