意外性はその辺に転がってる
2024.07.07
ぺぎんの日記#95
「意外性はその辺に転がってる」
今日は七夕なのだけれど、北海道の七夕は(一部地域を除いて)一般に8/7とされているので、今日は七夕と全然関係のない話をします。
部活の先輩。
部活の休憩時間、みんなでお弁当を食べているときも別教室で小説を読んでいるような、そんな先輩の話。
私の所属している演劇部は、嬉しいことに部室が与えられている。
部室には移動式のホワイトボードがあって、ミーティングやら何やらに利用される。今は学祭公演に向けて準備をしている関係で、舞台装置のセッティング図や小道具類のリストが書かれている。
そのホワイトボードに、数日前から学祭のカウントダウンが描かれるようになった。イラストと共に「学祭まであと◯日!」と、気合の入る言葉が描かれている。
なんとなく、早く部室に来た人が描いてくれているんだろう程度に思っていた。みんなきっと、自分じゃない誰かが描いたのだろうと勝手に思っていたんだと思う。
今日、学祭の準備のために9:00に学校に行った。まだ人気の少ない学校。いるのは部活の人か、学祭の準備をしに来た人。
こういうときはいつも、とりあえず部室に行くようにしている。いつもの資料やら小道具やらに囲まれて、時間を過ごすのが好きだから。
ガラガラっとドアを開け、電気をつけて、そこで昨日の片付けをしていないことに気づき、少し億劫だけど部室の片付けを始まる。一緒に準備をしようと誘った仲間との集合時間までは、まだ30分ほどある。
黒く塗ったベニヤ板、ぬいぐるみ、散らばった台本。それらを拾い上げ、あるべき場所に持っていく。その往復作業を繰り返していたとき、廊下の方で足音がしているのに気がついた。
あの先輩の足音だった。1人、お弁当を別教室で食べる先輩。
小さな歩幅で、しかし一歩一歩しっかりとした足取りで一定のリズムを刻んで歩いてくる先輩の足音。それを聞いて、「あれ?先輩も学祭準備かな。あんなに渋ってたのに」と思う。
先輩は前々から「学祭が憂鬱。協力するの苦手。話すの苦手」と言っていた。私は先輩のことを、てっきり学祭嫌いの人だと思っていた先輩のキャラ的にもそんな気がしていた。
でも、部室に入ってきた先輩の取った行動は以外なものだった。
ガラガラっとドアを開け、先輩が入ってくる。電気はつけているけれど、ビックリさせてしまうと申し訳ないので、ドアから先輩が見える前に「おはようございまーす」と挨拶をする。
先輩が「おはよー」と言いながら入ってくる。
あー2人かー、なんか居づらいなー、などと失礼なことを思いながらも、部室の掃除はしてしまいたかったので、部屋をウロチョロしてものを動かしながら先輩の様子を伺う。
先輩は、先日「ハリポタのレプリカなんだ〜」と言っていたカバンを下ろし、スマホを取り出して少し操作をする。
そしておもむろに立ち上がってホワイトボードの前に行き、ボードに、人のイラストを描くときに使う、顔の十字を描いた。
私は作業をしながらその様子を見守る。
先輩の絵は十字からスタートして、どんどんキャラクターになっていく。アニメのキャラなのか、もしくは創作なのか、可愛らしいフリフリドレスの少女が形になっていく。
おおよそ全身が描けた辺りで先輩は、少女を描いていた赤いホワイトボードマーカーを置き、黒いマーカーで「学祭まで、あと◯日」と書き込んだ。あ、実際には◯に数字が入っていた。
私は驚いて、思わず尋ねた。
「え、そのカウントダウンって先輩が描いてくれてたんですか!?」
先輩は応える。
「うーん、5日前くらいからかな〜。なんとなくね〜」
私は何と言ったか忘れてしまったが、おそらく「凄い…」や「ありがとうございます」といった言葉を発したと思う。先輩と何言か言葉を交わし、そのあと先輩は「じゃ、私はこれで〜」と、帰ってしまった。
先輩は学祭準備をしにいったのだろうか。それともこれを描くためだけに学校に?
頭の中の「?」は消えないまま。驚きと、申し訳無さと、疑問と、そういうものが入り混じった感情で、ただ、カウントダウンを描いてくれていた先輩の行動について考える。
多分、先輩と学祭の間には、私と学祭を繋ぐインターフェイスとは全く別のそれがあったんだと思う。私がその先輩が持つようなインターフェイスを想像し得なかっただけで、先輩は先輩の方法で学祭に参加していたのだろう。
なんだかココ最近、特に目新しいものに出会うこともなく、刺激の少ない日々を過ごしていた。
でも本当は、意外なものって、そこら辺に転がっているのかも知れない。
そんなことを思った日曜日。