
「なむはむだはむ展『かいき!はいせつとし』」へ〜〝愛すべきカオス〟から共創へ〜
今日は群馬県太田市にある太田市美術館・図書館で開催されている「なむはむだはむ展『かいき!はいせつとし』」へ。ホームページに掲載された展示の紹介を見て「これは行くしかない!」と思い、約3時間電車に揺られて訪れました。
作家・演出家・俳優の岩井秀人、俳優・ダンサーの森山未來、シンガーソングライターの前野健太の3名によるプロジェクト『なむはむだはむ』。本プロジェクトは、「子供たちのアイデアを大人たち(プロのアーティスト)がなんとか作品にする」というコンセプトで2017年に始まり、舞台を様々に変えて実践を重ねてきました。本展では、美術家・彫刻家の金氏徹平も加わり、初めて展覧会としてクリエーションを展開させます。子どもと大人の表現が真正面からぶつかり合う本展を、どうぞご体験ください。

太田市美術館・図書館を訪れるのは初めてでしたが、東武スカイツリーラインの太田駅の目の前にありアクセスは抜群。外観・内装共におしゃれな造りで、こんな素敵な場所が身近にあったら毎日でも通いたいなぁと思いました。

場内には、子どもたちが書いた詩からアーティストの方々がイメージして作った様々なジャンルの作品がずらり。

作品のきっかけとなった詩は、近くにあるQRコードを読み込むことで読むことができます。詩といっても「綺麗に」作られたものではなく、良い意味で子どもたち特有?のカオスなものが中心。思わず吹き出してしまいながら、展示を見て周りました。

受付から2階へ行く通路には、床から壁にかけて子どもが書いた詩がダイナミックに書かれ、そこから連想したアーティストさんたちの写真が展示されていました。愛を込めて〝しょーもない〟文が早速ツボに入ります(笑)


さらに、順路を辿ると「うし」という詩から3人のアーティストさんが連想し制作した映像が上映されていました。「もうもう」という言葉に着目して試行錯誤し、最終的に「もうもう」という生き物?概念?を発明していく岩井秀人さんのアプローチは、なんとなく「もじつけ」と重なって面白いなぁと感じました。


2階展示室には「深読みの形跡」というコーナーがありました。子どもたちの詩について、アーティストさんたちが真剣に討論する様子が面白い!





また、「ふじい天」くん?が書いた詩から着想した作品たちがずらり。
おとなは、みんな、しごと、をしている。
でも しゃかいの なかには しごとを していない人も います。
そこに、あらわでたのは しごとマン
しごとマンは みんなに しごとを してほしいと おもっている うちゅう人なのです。
だから その人たちは しごとを しにいくように なったそうです。 ※原文ママ

ガムテープはすごいとおもう ガムテープが人だったら かんぜんに つかいものに ならない なぜかというと くっかないし ちぎることが できない だから ガムテープは すごいも おもの みんなも ガムテープの すごさを かんがえてみよう。

極め付けは、「ふじい天」くんの詩をロック調や演歌風の歌にして、3人のアーティストさんがどこかで聞いたことがある歌い方の歌手に成り切り、次々と熱唱する歌謡ショー風の映像作品!撮影はできない作品だったためその面白さをお伝えすることができないのが残念ですが、腹筋が崩壊しました(笑)ラストを飾る「ちずきごう」は耳に残ること間違いなし!
あーみ戸は、はーえーたちを、中にーいれなーいーたーめーにー あるけどー 子ーばーえはー なぜかー はいってくるー
(おわり) ※原文ママ
ちずはー みーやーすーいーけどー ちずーきごう だーけーは わかーりにーくいー
(おわり) ※原文ママ
今回の展示を通して、子どもたちの想像や表現を一緒に楽しみながら本気で向き合う大人がいることの大切さを感じました。
やや話がずれますが、私は河童を見たことがあり、それを周囲に話した結果、なかなか共感を得ることができないどころか否定的な言葉を浴びて傷ついたという体験をしてきました。

私にとっては事実であり、空想でもフィクションでもありませんが、今回の展示に登場した数々の詩たちも、ともすれば「本当/嘘」「正しい/正しくない」「綺麗/汚い」「美しい/美しくない」などの二項対立的な価値観によって「取るに足らないもの」「無意味なもの」「馬鹿げたもの」「修正やを要するもの」として切り捨てられることでしょう。こうした価値観の中で、いつしか「コドモ」は「オトナ」へと「矯正」「教育」されていくのかも知れません。
今回の展示を通して、子どもたちの内側から湧き出る〝愛すべきカオスさ〟=我々大人たちにとって懐かしさを感じる原体験的なものは、そんな二項対立的な価値観、そして「コドモ」「オトナ」という分断を越えた新たな共創関係を生み出す原動力となり得るかも知れないと感じました。もちろん、そのことを大人の側が自覚していることが大前提ですが…。そういえば学部生時代の卒論も、そんなテーマで書いたなぁ。
「突き詰めて考えると、私がやりたいことは、今回の展示の(子どもたちが想像・創造する)〝幻獣〟〝伝説の生き物〟バージョンなのかも知れない!」と脳内にスパークが起こるような、そんな刺激に満ちた展示でした。

