![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100106464/rectangle_large_type_2_fb99c5ff7f84b96efd8b8baa838d1fc8.jpg?width=1200)
「引き寄せられた気配」展レポート
今日はトーキョーアーツアンドスペース本郷で開催されている「引き寄せられた気配」展を訪れました。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100081637/picture_pc_15fb074ac21093e3f69b5bee20b0e92f.jpg?width=1200)
見えないものをいかにして捉え、表すか。具体物とイメージとの関係性とはどのようなものか…。そんなことを考えたいなぁと思いながら入館。館内には3名の方々の作品が展示されていました。
レイライン(ley line)
1階には、鮫島ゆいさんの作品が展示されていました。異なる古代遺跡を地図上で結んだ時に現れる直線である「レイライン(ley line)」と「別々の画面やイメージの断片を繋ぎあわせるようにひとつの作品として構成する手法」とに親和性を感じたという鮫島さんの作品からは、「距離」「あいだ」について考えさせられました。
一見すると分断されていると捉えられがちな要素も、その「距離」「あいだ」には様々な要素があり、それらも含めて考えることで二項対立的な構造は崩れていく…そんなことが作品たちから伝わってきます。こうした「距離」「あいだ」にある要素の中には「白」も含まれていましたが、「余白」「空白」という役割ではなく、はっきりと1つの要素としての「白」として位置付けられている点が印象的でした。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100084552/picture_pc_4c010d1405ed5d0ed07b4abc6fed6407.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100084625/picture_pc_1e0508ae496245b2c9b68e8cf6a5a8fa.png?width=1200)
「距離」「あいだ」は、特に「砂の代」(ママ)や「絵の木乃伊」などの作品に象徴されていました。作品間に広く設けられた距離は、まさに「レイライン」。実際の遺跡と遺跡の「距離」が生み出す「あいだ」にも、きっと多様な要素が蠢き合っているのでしょう。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100100342/picture_pc_2ca050d91dff6c44310857a8e86c72fb.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100100266/picture_pc_54625f941f9db03a5a858d33c16d515d.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100100283/picture_pc_c1354baac0a5e2c02687ef1cfd085a0b.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100100313/picture_pc_d4bc7069dbbaa1622b4b67e2df06e9b2.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100100311/picture_pc_aa154688b4b4ee655f57ea8acc68822c.png?width=1200)
点・穴・くぼみ…多様な要素が織りなす宇宙
2階には須藤美沙さんの作品が展示されていました。天の川銀河を見つめた後、木星や土星を巡り、太陽へとたどり着くという流れで展示構成が工夫されています。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100104886/picture_pc_296ffe9e016c140d5061953737a8a065.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100101196/picture_pc_3896b92930d45d5905c73f7fa3a1528a.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100101197/picture_pc_9a6dc6782079e9ed99c40a7dbeaa7008.jpg?width=1200)
作品をよく見ると、無数の突起(点字のようなもの)や穴、窪みによって構成されていることがわかります。実際の星たちも様々な無数の要素が組み合わさって成り立っています。そして、これらの要素の総体として「気配」が生まれるのだろうと作品を通して考えることができました。
今回の作品は「国立天文台の太陽観測衛星『ひので』やNASAの天体観測データ、研究者へのインタビューをもとに、紙にピンで穴をあける手法によって作られたものである」とのこと。星を作り出す要素間の「距離」「あいだ」だけでなく、それらの総体として生まれる「気配」をきっかけとして生まれた観測データやインタビュー、さらにそれらと出会う中で生まれた須藤さんの表現など、一連の「距離」「あいだ」の中で織りなされる宇宙。その中にいる時間がとても心地良かったです。
断片化と揺らぎ
3階には海老原靖さんの作品が展示されていました。『エレファントマン』や『ひまわり』などの映画に出てくるシーンを「断片化し、キャンパスに描くことで、映画のストーリーや時間軸から解放できたように感じ」るとともに、「そこには確かに、前後の気配や誰かの意図が存在する」と述べる海老原さん。「現実の世界と作られた世界との間で、作り手の視点と僕の視点との間で、揺らぎ、共鳴し」、「見る人の記憶と結びつき、さらに大きく揺らいでいく」というダイナミズム観に感動しました。
1つの絵画あるいは1つの映画の断片だけでは見えてこない「気配」。そこに作品を断片化して作品を作り上げた海老原さんの感性や、それを受け取る鑑賞者の感性も加わって揺らいでいく…。どちらの映画も観たことがない私でしたが、その揺らぎの中に加わり、共鳴することができました。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100103836/picture_pc_40e2ffc25fff15540b56d3957e470254.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100103832/picture_pc_e0bac04e138176844f05118116f37b84.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100103839/picture_pc_4fcb85b2cc5a31190a074f9b374c5b31.jpg?width=1200)
まとめ
今回の「引き寄せられた気配」展を通して、「気配」とは様々な要素の総体であり、そこに「距離」「あいだ」があることで(海老原さんの言葉をお借りすると)「揺らぎ、共鳴し」続けるものであるかも知れないと感じました。
今回のブログを通して、また新たな「気配」が生まれ、揺らいでいけば良いなぁ。
※写真撮影が可能な展示であり、SNSへのアップも可能であると確認をとりました。また、引用部分は入館時に配付されるパンフレットから抜粋しました。