「メカリアル」展と、触発された表現
今日は山梨県立美術館で開催されていた、たかくらかずきさんの「メカリアル」展を訪れました。
「日本で広く共有される信仰の中に息づく『存在を信じるが触れることのできない、向こう側のものたち』を『デジタル上の存在』に極めて近いものと捉え、AIによる画像生成、ビクセルアニメーション、3Dプリント、VR(仮想現実)、NFTといったデジタル技術を用いて表現する作家」(山梨県立美術館ホームページより抜粋)として紹介されていたたかくらさん。私も八百万の神的な存在や価値観に関心があるため、最終日に間に合うよう滑り込みで訪れました。
館内に入ると、まるでRPGの世界に入り込んだかのような美術館周辺の図と、不思議な魅力を感じる「道祖神」たちが展示されていました。さらに展示の前には石が積まれたオブジェ(道祖神)とQRコードが。これを読み取ることで、「道祖神」の姿を見ることかできます。
「道祖神」たちを探す
美術館内外合わせて10種類の「道祖神」たちがいるとのことで、早速手掛かりとなる図をもとに散策スタート!
…しかし、方向音痴の私は、なかなか見つけることができず😓
道中で出会った猫さんにも変な目で見られる始末でした😓笑
それでも散策していくうちに、だんだんと「道祖神」の気配?を感じ取ることができるように。「道祖神」を見つけた時の喜びは子どもの頃に楽しんでたオリエンテーリングのヒントを読み解いて近くまで来た時や、ポケモンGO!でレアなポケモンの影を見つけた時のわくわく感と重なるものがありました。
たかくらさんが描く「道祖神」は「仮想」と「現実」、「瞬間」と「永遠」など様々な二項対立的な要素が和合された存在として描かれています。現在「人間」と「非人間」の序列や分断を超えた教育観・保育観について考えているため「道祖神」たちから放たれるメッセージに深く共感しながら全10体と出逢うことができました。
触発されて「伝説の生き物」探しフィールドワークをすることに
今回の展示のユニークなところは、美術館内だけでなく、一見すると仮想空間とは対照的であるような公園にも「道祖神」という形で「仮想」と「現実」の狭間を生み出したことだと思います。「道祖神」たちが「現実」の世界に息付き、逆に「現実」の要素から「仮想」が生まれていくというインタラクションの面白さを感じました。
こうした展示に触発され、私も「道祖神」探しの傍らで伝説の生き物」創造フィールドワークを行うことに。
雨音が響き渡る中、終始聞こえていたのは鳥と思しき綺麗な鳴き声(ほぼ100%ウグイスですが、「伝説の生き物」探しでは固定観念や既成概念を取っ払うため、敢えて「ウグイス」とは断定しません)。その後、卵らしき物体や切り株に付いた足跡らしき痕跡を相次いで発見しました。
さらに、公園内に設置された句の札のうち、島崎藤村のこの句が目に入りました。「なんで椰子の実なんだろう?…そうだ!これは遠い島から流れ着いた、椰子の実に似たフォルムの『伝説の生き物』の目撃情報だ!」と私は閃きました。
極め付けが、この存在感ある鳥さんの像。
「これは『伝説の生き物』を目撃した人が、その記憶を伝えるために表現したものに違いない!」
こうして得た「伝説の生き物」の証拠を混ぜ合わせ、そのフォルムを想像し表現してみました。
こんな感じです!仮想と現実を重ねて表してみました。遠い島から来た椰子の実風のフォルムと鳥、足跡の要素を合成。綺麗な声で鳴き、人々の心を癒します。皆さんも山梨県立美術館に行ったら、この子の面影を感じる…かも!?
まとめ
「道祖神」を探し、「伝説の生き物」を表現し終え、館内の図書館にてVR体験をしました。人生初のVR。たかくらさんが表現した仮想空間の中には、先程見つけた「道祖神」たちが確かに「生きて」いました。私が山梨県立美術館周辺の「証拠」を集めて描いた「伝説の生き物」も、表現技術さえあればVRの中で命を持つことができるのかな…。
技術や表現が豊かになるにつれて、古来の日本人が大切にしていた、異質なもの同士の中に繋がりを見出す八百万の神的な価値観が蘇っていく…。「過去」と「未来」という分断さえも超えていくような視点やアイディア、アプローチを、たかくらさんの展示から学ばせていただくことができました。