海が見える丘の街
「あ、海の匂いがする」
ビルの10階にある職場の窓を開けたとき、
ふわりと潮の香りが鼻をかすめます。
おそらく弁天町方面からの風にのってくるのでしょう。
目を閉じて胸いっぱいに海の匂いを吸い込んでから、仕事を始めます。
私が育ったのは神戸の、とある海が見える街です。
駅まではバスで10分ほど。
日曜日の朝、歩くのが大好きな両親に連れられ、
わざわざ遠回りして(笑)
30分くらいかけて駅まで歩いていました。
そのルート、途中に海が一望できる丘があるんです。
「また歩くん?」と文句をたれていた私も、海が見えるその場所が大のお気に入り。
丘を下って行くと、潮の香りがどんどん濃くなっていきます。
さらに歩を進めると、明石の昼網の魚屋さんや、それを焼いて食べさせる店、干物の店などが立ち並ぶ賑やかな商店街。
店先の蚊取り線香や海風、それぞれのお店屋さんから漂う種々雑多な匂い、喧騒。
駅と漁港の間にある海神社。
夏祭りの夕方、浴衣を着せてもらって仲良しの幼馴染やお兄ちゃんたちと、大はしゃぎで海が見える丘を下って海神社へと急いでいた…
海の匂いは、私にそんな懐かしい風景を思い出させてくれます。
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