ボーダー柄とはなにか
普段から目にするファッションの柄や、デザインで使われる模様でボーダー柄があります。
デザインのモチーフにボーダーを使おうと思った時に、ボーダー柄自体に何か意味があるのかなと思い調べてみました。参考にしたのは「縞模様の歴史 ミシェル・パストゥロー」。
調べてわかったのはボーダーが持つキーワードは「異質」、「自由」、「独立」という3つです。3つに沿って説明していきたいと思います。
ボーダーの語源
そもそもボーダーという言葉が指し示す柄はほとんどの人が考える横縞や縦縞の柄ではないそうです。
ボーダーとはボーダーライン等という言葉で使われるように何かの境界を意味する言葉です。 本当の意味でのボーダー柄とは例えばTシャツの袖の縁を型どるように描かれた柄の事をいいます。ちなみにボーダーシャツで有名なセントジェームスでも縞模様はボーダー柄と表記されているので、ボーダーという言葉の持つ一般性はかなり高いと思います。
ボーダーという言葉がいつから今の意味で使われる様になったのかは不明ですが、ボーダーという言葉ではなく縞模様自体が、図柄としてどういう役割を持っていたのかを探ってみます。
「異質」忌み嫌われるボーダー
意外なことに西洋では早い段階、10世紀ぐらいには縞模様は忌み嫌われる者に貼られる目印のような役割を持たされていたようです。それは当時の宗教画でカインやユダ、キリストの父である聖ヨゼフ(カインは人類最初の殺人の加害者、ユダは裏切り者、聖ヨゼフは歴史的にかなりぞんざいな扱いを受けていた)などが宗教画などで体の一部に縞模様を身に着けさせられていることなどから推測できます。
また、囚人や社会的に蔑視された職業、死刑執行人、売春婦、道化師などは縞模様の衣服を身に着けることを義務付けられていました、犯罪者などが牢獄で着せられる獄中着も縞々です、アニメのルパンが刑務所に入れられた時に着てる囚人服とかたしかに縞々ですね。これらの事から明らかに縞模様が普通の人々とそうでない人を区別するために使われていた事がわかります。なぜそれが縞模様だったのかは不明ですが察するに当時衣服に使われる生地の中でポピュラーだった無地に対する最もコントラストの強い生地が縞模様だったのではと思われます。
今の感覚だとポップとかかわいいに分類される縞模様がそんな扱いを受けていたとは意外です。
この傾向は18世紀後半ぐらいまで続いたようです、縞模様の持つイデオロギーを決定的に変えたのがアメリカの英国からの独立です。アメリカの国旗が持つ横縞は自由の象徴となってフランス革命へと受け継がれます。
「自由、独立」蔑視の対象から自由の象徴へ
1789年、フランスでは三色旗(当初横縞だった)が革命の象徴として街の至るところで見られるようになります。人々はこぞって縞模様を身に着け、縞模様はプロパガンダとして大きな役割を果たしました。
その後海軍に縞模様の制服が採用されていたりしますが、縞模様を着せられるのは海軍のなかでももっとも下働きの水兵(海に転落した時に目立つからという理由もあります)だったりと、まだ完全に縞模様に対する蔑視は抜けきれていなかったようです。セントジェームスが誕生したのはフランス革命からちょうど100年経った1889年。漁師や船乗りの仕事着として誕生しその後マリンスポーツウェアなどへよく使われ洗練されていきました。
現代でのボーダー
現代に移って縞模様はさらにポピュラーになったように思われます。よく映画などでマフィアやヤクザが、派手な縦縞のスーツを着ていたりしますが、マフィアは当然中世の頃のように誰かに強要されてそれを着てるわけではありません。また一般的にどちらかといえば縞模様は子供や若い年齢層が着ている事が多い気がします。会社員などであまり目立たない程度のストライプを着ている人はいますが、なかなか主張の強い縞模様を着ている人を見ることは少ないです。
縞模様に対する蔑視がほとんどなくなった現在、縞模様は社会から区別されるために貼られたレッテルではなくなりましたが、未だ規律やルールという社会の規範に対してアイデンティティを誇示するため異質性を表す役割を持っているようです。なぜ、これだけ一般的になった縞模様を着ることがアイデンティティの誇示に繋がるかと言えば、縞模様が持っている警告性と他のものとの異質性を提示する特性があるためだと思います。
まとめ
ボーダー柄が担わされてきた役割は、もともとボーダー柄が持つ視覚的な印象から成り立っているという当たり前の結果ではありますが、知って使うのと知らないで使うのでは説得力が変わりそうです。また一口にボーダーといっても白と黒のコントラストとグレーと黒のコントラストでは主張の強さが全く違います。用いる時はそのデザインで何を主張したいのか、考えて使った方がよさそうですね。