出会いの時間
昔の話です。
学生時代のときです。
夏の1ヶ月間をかけて、北海道をバイクでツーリングしていました。
【エピソード1】
その頃は、旅先でのおもしろさを味わうというよりは、
「いろんなところに行ってみたい!」
「いろんな道を走ってみたい!」
という思いだけでしたので、明るいうちにひたすら走って、暗くなったらテントを設営するという旅でした。(考え方が若かったなあと思います。)
北海道に渡って何日目くらいだったでしょうか。
いつものようにひたすら走って、ある浜辺にテントを設営して眠ろうとしました。
しばらくすると、女の子がやってきて、
「ジンギスカンを家族でしているので、一緒に食べませんか?」
と夕飯にお誘いいただきました。
広い浜辺でしたので、何組かのキャンプをしている方々がおられました。
その女の子の家族は、私のテントから少し離れた隣でキャンプをされており、私がバイクで走ってきて何もせずにテントを設営してすぐに眠ろうとしたのを見て、もしかして夕飯を食べないで寝るのではないかと思って声をかけてくださったとのことでした。
失礼ながら今となっては、お顔を声も記憶にはありませんが、ことあるごとになつかしく思い出されます。
【エピソード2】
早朝いつものようにテントをたたみ、バイクに載せ、近くのガソリンスタンドを目指します。
立ち寄ったのは小さなガソリンスタンドでした。
お店の方にレギュラーガソリンを満タンにとお願いしたところ、
「レギュラーの値段でいいからハイオクを入れてやるよ。」
と言ってハイオクガソリンを入れてもらいました。
エンジンをかけて出発するときにも、
「気をつけて行けよ!」
と大きな声で送り出していただきました。
バイクはレギュラーガソリン対応なので、ハイオクガソリンを入れたことでどう変化があるのかは分かりませんでしたが、お店の方のお気持ちをありがたく感じました。
失礼ながら今となっては、お顔も声も場所も記憶にはありませんが、ガソリンスタンドでふと思い起こされるシーンです。
【エピソード3】
今と違ってナビがない時代なので、地図で場所や道路を確認しながらの旅でした。
行くべき道がどこかわからなくなり、ある小さな街の交差点でバイクを路肩に停めました。
何度も周囲の道路標識を見渡しては地図で位置を確認していました。
あちこち見渡している視界に、一人の男性が歩道を歩いて来て、飲み物の自動販売機の前で立ち止まりました。
「ガシャーン、ガシャーン」と2回続けて自動販売機の方向から音が聞こえたので、一人で2本買ったんだなと思いました。
すると、その男性がこちらに近づいてきて、
「気をつけてね!」
と言いながら1本の缶ジュースを私に差し出しました。
またまた失礼ながら今となっては、お顔も声も記憶にはありませんが、自動販売機を前にするとふと思い出すシーンです。
この3つのことを思い出すと、「出会いの時間」とは何なのだろうと考えてしまいます。
広い大地をひたすらバイクで走った旅でした。
また、本州にはない景観も楽しむこともできました。
そして、
「一瞬の出会い」の方々が、今でも私の中に生きています。