リユースショップの人間模様

以前、NHKの「ドキュメント７２時間」の番組で、総合リユースショップ「2nd STREET」のお店を舞台にした放送がありました。

私は、友人から使わなくなって物をいただくことはありますが、中古品を扱うお店に行ったこともなく、ましてや買い物をしたことがありませんでしたので、番組の予告を見たときから楽しみでいました。

放送では、お店に売りに来る人と買いに来る人、そして店員さんの人間模様にすっかり見入ってしまいました。

欲しくて買ったシューズを数回しか履かないでただ持っているより、欲しい人に履いて欲しいと思って売りに来た若いご夫婦。

お母様が亡くなられたことで、物（遺品）を整理するために売りに来た男性。

小さい頃に親からギターを買ってもらってギターを弾いているというエピソードをずらりと並んでいるギターの前で番組のスタッフさんに話してくれる青年。

明日親の介護のために九州の実家に引っ越しをするため、物を売りに来たという男性。

結婚のため、独身時代の物を処分するために売りに来たというカップル。

家の洗濯機が壊れたため、急場を凌ぐために洗濯機を買っていくご夫婦。

２６歳になったら家を出て一人暮らしをするという親との約束があるため、家財道
具を買いに来た娘母。

みなさんに様々な背景があっての７２時間でした。
放送が終わっても、まるで一本の映画を見終わったかのような余韻に浸る自分がいました。

一人一人が抱えていたり背負っていたりする背景を想像してしまうお店にすっかり魅了されてしまった私は、先日地元にある「2nd STREET」のお店に行ってみました。

開店と同時にお客さんが来られ、大きな荷物を車から運び出すお客さんもいれば、買った物を車に運び込んでいるお客さんもいて、駐車場はひっきりなしの車の出入りでした。

お店の中では、靴を試し履きしながらじっくりと選んでいる方や服を試着する方々、おもちゃを大量に買っている方など、どんな思いで処分したり買ったりされているのだろうかという背景を勝手ながら想像してしまいます。

そういう意味では、通常物を買って帰るだけのお店とは違う感覚になっている自分に気づきました。

「中古品よりは新品が欲しい」などと心狭く生きてきた私にとっては、価値感が大きく変わる時間になりました。

「新品がいい」と思って買うものの、使わなくなったら押し入れや物置に仕舞い込んだり、いつの間にか所在すら気にせずにどこかに放ってしまっていたり・・・。
あたかも物を大切にしているようで、実はしていないのではないかと思いました。

お店を利用するお客さんの様子を見ていると、物の使われ方を考えて処分したり、中古品だからこそいいという感覚の方が物を大切にしているのではないかと思いました。

お客さんは、自分にとっての物そのものの価値をわかって売り買いをしているように感じます。

私のような「新品＞中古品」というバイアスがかかっている価値観ではなく、目の前にある物そのものの価値を見ているように思うのです。

だから、使わないでいるよりは使いたい人に使って欲しい、今の自分にはもう必要がないから処分するという気持ちになれるのかもしれません。

淡々と売り買いをしている姿は、一見すると物への執着がないように思えてしまいますが、実は物というものの使われ方そのものにいい意味での執着やこだわりがあるからこその姿なのではないかと感じるのです。

逆に私の方が物に執着しているようで、実はしていない、つまり、いっときだけ満足し、あとは埃を被った状態であったとしても単に所有しているというだけではないかと反省しました。

「2nd STREET」という名前を聞いたとき、物の使われ方にも第二第三の人生があるということなのだろうと想像しました。

物の中には、何度もお店と使う人を行き来している物があると聞きました。

しかしながらそれは、物を使う人が入れ替わっているだけで、物そのものとしての
使われ方としては 、2ndではなく一つの物の人生なのではないかと思います。

私も第一第二の仕事としての人生が終わり、ようやく第三の人生を歩み出したつもり・・・でしたが、私が主役の私の人生である以上、「私の人生も一つ」なのだと物の人生と重ねています。

どんな紆余曲折があろうが、自分が主役である一つの人生をどう歩んでいくのか。

今回を断捨離をするいい機会ととらえ、「2nd STREET」に持っていくために早速身の回りの物の整理をし始めました。

お店の人間模様に私も加わわること、そして、いくらで買い取ってもらえるのかを楽しみにしながら。