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雇われ院長が考える分院展開の難しさ(2)


クリニックチェーンおけるKSFとは

 コンビニ的価値を提供するクリニックチェーンにおけるKSFは、医師をどれだけプールできるかということに掛かっています。1年365日、同じ医師が稼働することは不可能ですので、クリニックのオペレーションをしっかり仕組み化しておいて、その一つのパートを多数の医師が担うということになります。そういった点においては、医師の数の多い関東、関西圏以外の都市でのクリニックのスケール化は困難であると思われます。また、地方であれば医局の人事的な締め付けも強いため、医師採用も困難になってきます。

医師のモティベーションを維持するという難題

 複数の分院が展開できるようになるということは、自院でのオペレーション構築が進み、それが横展開できるまでに成長したことの証左でもあります。優秀なオペレーションとは、それが属人化せずに、誰がやっても同じような成果を出せるものだと思いますが、ここに医師のモティベーション問題が発生してきます。つまり、医師はスペシャリストであり、属人化した仕事をこなすことで、患者さんにとって唯一無二の価値を提供していると実感したい生き物なのです。単に毎日ひたすら綿棒を鼻に突っ込んで、淡々と予防接種して、だれがやっても問題ないような仕事を淡々とすることを望んでいないのです。

オペレーション構築と医師モティベーションのジレンマ

 結局、仕組み化をすすめてクリニックを拡大しようと努力すれば、雇われ医師のモティベーションが低下していく危険をはらんでいます。その点を考慮して、診療とは関係ない部分のオペレーションを構築し、医師が診療に注力できることをアピールする機関も多数あります。しかし実際のところは、小児科、耳鼻科、皮膚科といった数を診ることが必要な科では、診療自体もオペレーションの中に組み込まれてしまい、医師の個性を発揮することが困難で、さらに邪魔にさえなってしまっていることもあるかもしれません。

コンビニ的拡大は、クリニックとしての価値を限定する

 こういったジレンマから脱出できないと、使い勝手の良い医師が集まって、クリニックとしての診療のレベルも上がらないことになります。また使い勝手の良い医師は、採用へのアサインは早いですが、気に入らないといとも簡単にやめてしまいます。そのため常に医師採用に腐心する自転車操業のような状態に陥ってしまう危険性もあります。診療内容が置き去りになって、とにかく医師を確保することに専念しないとならない状況のクリニック。せっかく頑張って展開したクリニックの価値が、診療の質ではなく、365日空いて便利だというだけなのも寂しいですね。

大手クリニックチェーンに対抗するためには?

 個人院からの分院展開を考える場合には、自院にしか出せない価値を提供することを考えなければなりません。使い勝手のよい医師を集めてコンビニ的な幅広な拡大を目指すより、魅力や価値のある医師をリクルートして既存の医療に深みをもたせるような拡大を目指す方向の方が適切でしょう。
 次回は、私自身の雇われ院長としてのマインドおよび医師採用にも関わっている経験に基づいて、実際にどのような姿勢で医師採用を行っていくべきか?についてお伝えしたいと思います。

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