『最新型AI』 【ショートショート(1130文字)】
20xx年、某所。
『世の中には2種類の人間しかいないのではないかと思う。
私の作ったこの最新型AIスマホの凄さが分かる者と、そうでない者の2種類だ。』
暗がりの中にスポットライトで照らされる私は、白いタートルネックに黒のパンツ、丸メガネをかけてそのステージに立ち、見えない大衆へ向けて語りかける。
暗いステージの上を右側へゆっくり移動しながらプレゼンする私を、スポットライトが実直に追いかけてくる。
『説明しよう。この最新型AI搭載スマホは、人物判別写真撮影や動画撮影、顔認識パスワードなどの従来の機能は勿論のこと、最新のAIによる生活管理機能がこのスマホの大本命の機能だ。』
ステージの右端で折り返し、今度はゆっくり左側へ移動しながら顎に手を当て、聡明な表情で大衆へ語りかける。
『この機能を使えば、何を食べて、どんな休日を過ごし、どんな友人を持つべきか、どんな恋人を持つべきかをスマホの中のトラッキング機能を使ってAIが分析し、最新のマッチング機能を用いて、あなたに最適な生活や出会いをスマホの指示に従うだけで、それとなく自然な出会いを演出してくれる。』
ステージの真ん中で立ち止まり、正面へ向き直り顔を上げる。
『つまりこれさえあれば、あなたは何も考えなくても幸せな人生を送れるのです。あなたの人生の効率を最大化する事ができる。あらゆるストレスを感じない、完璧な生活をこの最新型AI搭載スマホと一緒に送りましょう。』
暗がりの中から不特定多数のシャッター音が向けられる。
世紀の瞬間である。
暗転したステージ上に、関係者スタッフが集まり、ぞろぞろと片付けを始める。
その中の1人の青年がこちらへ駆け寄ってくる。片付け途中のステージの上で右側だけがステージの照明で照らされた青年が言う、
『さすがの大発明でした。私も早速購入予約してしまいました。』
『ありがとう。君の生活はさらに効率的にそして最大化することを私がこのスマホをもって保証しよう。』
『ありがとうございます。スマホが手元に届くのを楽しみにしています。』
そういうと青年は暗がりの中へ戻っていき、片付けの作業に戻って行った。
頭の中でエラーの表示が出る。
『今のやり取りは効率的では無かったな。』
片付けが本格的に始まったのだろう。
ステージ上のライトがステージ全体を照らし、片付け作業が本格的に始まった。
おびただしい数のコードが片付けスタッフの足下に転がっている。
『あ』
スタッフのうちの誰かがたくさんあるコードに足を引っ掛けてしまい、その先のコードがコンセントから抜ける。
『おい気をつけろよ、前も言ったろ!コードには引っかかるなって!』
スタッフのうちの誰かが声をかけている。
それは私の左足から繋がったコードであった。
視界が暗転した。
〜終わり〜
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