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『仕事できますね。』 【ショートショート(800文字)】

『いや〜、さすが山田さん。仕事できますね。』

肺に溜まった煙を吐きながら、私は今日も、呼吸をする。

田中良和25歳。大学卒業後、新卒で入社した、この会社に入ってから3年で学んだこと。

『仕事できますね。』

これを言うと、みんな満更でもない顔をするということ。

自分を客観視出来ない人は、その傾向が強いということ。

『いや〜。田中君に比べれば僕なんて、ごみ以下だよ。』

そのセリフとは裏腹に、山田先輩は満更でもなさそうだ。
その表情に隠しきれない綻びを、喫煙室に煙と共に所狭しと溢れ出る。

私はどこか得意な気持ちになり、新しいタバコに火をつける。

『アハハハ』

下から4番目くらいの、乾いた笑いを添えておく。

“ガチャリ”

喫煙室に田中部長と新入社員で後輩の上田君が現れた。

私は条件反射のように挨拶をした。

『あ、田中部長。ご一緒できて光栄です。
昨日のプレゼン本当に凄かったです!
感動しました!』

田中部長は、火をつけたところのタバコから吸い込んだ煙を吐く。

ちょっとやりすぎたか?と内心思う。

『いやいや。まあ俺くらいになるとお茶の子さいさいよ。』

田中部長は言う。

しかし、高揚しているのがわかった。

田中部長は新品とほぼ変わらない、火をつけたばかりの長さのそのタバコを、灰皿へ捨てて、新しい一本に火をつける。

しばらくして、私は短くなったタバコを灰皿に押し付け、喫煙室を出ようとドアの方へ向かうと、
ドアの前に一番近いあたりで一服している上田が煙を吐いてから、

『田中先輩。この間のプレゼンのレビュー、ありがとうございました。
自分のプレゼンに何が足りないのか、先輩のおかげではっきりしました!』

『いやいや、自分のことって自分が一番わからないものだよ。私で良ければいつでも相談して。』

答えながら思う。

上田君は私の若い頃を見ているようだ。
苦労するタイプだが、芯に秘めているものは熱い。優秀なタイプだ。

『ありがとうございます!
またよろしくお願いします!』

私はアゴヒゲをさすりながら、喫煙室の扉を出た。

上田君は火をつけながら私の後ろ姿を眺めた。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします!

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