2023年5月5日 【最新論文紹介】ウパダシチニブ(商品名リンヴォック)の実臨床での効果は?
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重症アトピー性皮膚炎に対する内服JAK阻害薬が普及しつつある。
■ 詳細なアトピー性皮膚炎の病態が、解明されてきています。すでに、アトピー性皮膚炎はよくわからないという病気ではなくなってきているといえます。
■ その情報伝達物質(サイトカイン)を抑える全身的な治療(内服薬や注射薬)が重症の方へ使用できるようになってきました。
■ そのうち、JAK阻害薬は低分子薬として注目されています。
■ しかし、まだまだ普及を目指すためには、データが不足しています。
■ そのようななか、ウパダシチニブ(商品名リンヴォック)の実臨床における効果やバイオマーカーの動きに関する報告がなされました。
この論文でわかったことをざっくりまとめると?
12歳以上の中等症から重症アトピー性皮膚炎患者31人を対象に、ウパダシチニブ15mg/日の経口投与とステロイド外用薬塗布を実施し、その効果を後ろ向きに確認した。
✅ 4週目と12週目の減少率(中央値)は、EASIがそれぞれ73.6%と85.6%、ADCTが81.3%、PP-NRSが70%と75%だった。
✅ IgE、TARC、LDH、好酸球数も低下したが、好酸球数の低下率は、4週目および12週目のEASIの減少率と相関があった。
背景・目的
■ アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)に対するヤヌスキナーゼ1阻害薬ウパダシチニブの有効性と安全性を実臨床で評価した。
方法
■ 2021年9月から2022年3月に、12歳以上の中等症から重症AD患者31人を対象に、ウパダシチニブ15mg/日の経口投与とステロイド外用薬塗布が行われた。
結果
■ ウパダシチニブはベースラインと比較して臨床指標を低下させた。
■ 4週目と12週目の減少率(中央値)は、eczema area and severity index(EASI)がそれぞれ73.6%と85.6%、AD control tool (ADCT)が81.3%、peak pruritus numerical rating score(PP-NRS)が70%と75%だった。
■ EASI75の達成率は、4週目、12週目でそれぞれ51.6%、67.7%だった。
論文より引用。
0、4、12週目における、
(a)EASI
(b)ADCT
(c)PP-NRS
(d)IGA
*p < 0.05; **p < 0.01.
論文より引用。
(a) アトピー性皮膚炎患者(n=31)に対するウパダシチニブ+ステロイド外用治療開始0、4、12週目のEASI、ADCT、IGA、PPNRSの減少割合の中央値。
(b)0、4、12週目のEASI 75、EASI 90、IGA0/1、ADCT反応、PP-NRS反応の達成率。
■ ウパダシチニブは、ベースライン時と比較して、4週目と12週目に血清乳酸脱水素酵素(LDH)と総好酸球数(total eosinophil count; TEC)を、4週目にthymus and activation-regulated chemokine(TARC)と免疫グロブリンE (IgE)を減少させた。
論文より引用。
アトピー性皮膚炎患者(n=31)に対するウパダシチニブ+ステロイド外用による治療開始0、4、12週目の、
(a)免疫グロブリンE(IgE)
(b)TARC
(c)乳酸脱水素酵素(LDH)
(d)好酸球数(TEC)値。
*p < 0.05; **p < 0.01.
■ TECの減少率は、4週目および12週目のEASIの減少率と相関があった。
■ ベースラインのTECは、4週目のEASIの減少率と正の相関があった。
■ 4週目および12週目のEASIの減少率は、女性患者の方が男性患者より高かった。
■ 多変量回帰分析により、4週目または12週目のEASI減少率が高いことは、それぞれベースラインのTECが高いこと、性別が女性であることと関連していることが明らかになった。
重篤な治療上緊急の有害事象はなかった。
■ 有害事象は、ざ瘡(5%)、クレアチンホスホキナーゼの上昇(9.7%)、帯状疱疹(1%)、AD(1%)だった。
結論
■ 実臨床におけるAD患者へのウパダシチニブ+副腎皮質ホルモン外用薬は、忍容性が高く、これまでの臨床試験と同等の治療効果が得られた。
■ ADCTとPP-NRSは4週目に急速に低下し、EASIは12週目まで徐々に低下した。
■ TECは、ADに対するウパダシチニブ治療において、4週目の奏効の予測因子として、また治療効果を反映するバイオマーカーとして機能するかもしれない。
管理人の感想
■ ウパダシチニブによる治療効果はあきらかではあるものの、まだ実臨床でのデータが不足しており、重要な報告と思います。
■ そしておなじ研究グループが、最近、バリチシニブ(商品名オルミエント)の同様の結果を報告しています。
Hagino T, Saeki H, Fujimoto E, Kanda N. Efficacy and safety of baricitinib treatment for moderate to severe atopic dermatitis in real‐world practice in Japan. The Journal of dermatology. 2023.
■ 内服JAK阻害薬に関しては、これからさらに様々な報告が増えてくるでしょう。そして、効果的な使用方法や副作用の頻度・程度をさらに考えていく必要性がありそうです。
■ 現状では早めに実臨床に使用できるようになったウパダシチニブが一歩リードしている印象があり、最近のメタアナリシスではウパダシチニブ30mg(小児では使用できない量)がJAK阻害薬のなかでは有効という結果になっています。
Lee KP, Plante J, Korte JE, Elston DM. Oral Janus kinase inhibitors in the treatment of atopic dermatitis: A systematic review and meta‐analysis. Skin Health and Disease. 2022;3.
■ 内服JAK阻害薬に関して、ウパダシチニブだけでなく、小児でもアブロシチニブ(商品名サイバインコ)が使用できるようになってきていることから、これらの使い分けも含め、今後検討が必要になってきそうです。
■ 一方で、今回の報告では18歳未満の小児に関して3例のみしか検討されておらず、小児における報告が今後必要となってくるでしょう。
元文献
日本の実臨床における中等度から重度のアトピー性皮膚炎に対するウパダシチニブによる治療の有効性と安全性の検討。
Hagino T, Saeki H, Kanda N. The efficacy and safety of upadacitinib treatment for moderate to severe atopic dermatitis in real-world practice in Japan. The Journal of dermatology. 2022;49(11):1158-1167.
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noteでは、ブログでは書いていない「まとめ記事」が中心でしたが、最近は出典に基づかない気晴らしの文も書き散らかしています(^^; この記事よかった! ちょっとサポートしてやろう! という反応があると小躍りします😊