贈り物は「気持ち」
ふと、自分の30歳の誕生日の日を思い出した。
「その運命の日」が近づくにつれて 、私が30という節目を迎えることに、自分より周りの方が表向きだけど気にかけてくれて、何かと話題に出してくれた。
「もう少しだね」「いよいよ30か」
当の私はというと、
年齢をひとつ重ねる毎年のイベントが、今年もまたやってくる、くらいの感覚だった。友達もいない、きっと変わりばえのない一日になるだろうと。
しかし当日は、ある人のおかげで、予想に反してそれはとても幸せな、記憶に残るような特別な一日になった。
30歳を無事迎えた当日の朝、想いを寄せていた相手から一番におめでとうLINEをいただいた。そして朝イチに直接にも、おめでとうと声をかけてもらえてワンポイントの入った可愛らしいブックカバーと、ボディクリームのプレゼントまでいただいた。さらに夕方にはなんと、サプライズでケーキまで用意してくれていたのだ。
夕方、彼が冷蔵庫を開けて、奥の方から「隠してたんだ」と、2つ入りのチョコレートケーキを出し、「一緒に食べよう」と言ってくれたときにはもう、私は涙が出そうなくらい嬉しかった。
何が心にささったって、彼はケーキが苦手なのだ。
2人で向かい合って、ケーキを味わった。彼は甘いものを普段あまり食べない(気がする)し、そんなに得意ではなかった(はずな)のに、私のために準備してくれて、さらには一緒に食べて、お祝いをしてくれた。そんな彼の優しさが、どうしようもなく嬉しくて、その時間は、今までのどんな誕生日プレゼントよりも幸せな、最高のプレゼントに思えた。
彼の優しい気持ちが、とにかく私の心に響いた。
その思いやりに涙が出そうになった。
2月の寒さに反して、その空間はただただ温かかった。
プレゼントは今も大切に使わせていただいてる。
その日の彼の優しさも、私の心の引き出しに大切にしまってある。
30歳の誕生日は、目には見えないけど、大きくて、じんわりと温かくて、ふんわりでもずっしりと密度のある、ものすごいプレゼントをいただいた気がする。
彼の思いやりという、決して目には見えない「気持ち」が、こんなにも私を満たしてくれた。人には、心があるからこそ、つらいことも多々。でもだからこそにこうした幸せがより心に染みるし、うーん、人間ってやっぱりいいのかもなあと、思えた日だった。
私はこれから先、誕生日を迎える度に30になった日の幸せなあの時間を思い出すことだろう。できればこの先、年を重ねるときは、変わらずその人にそばにいてほしい。