「アー」の曲
歌を聴くのが好きだ。好き…というか歌に支えられて生きてきた。友人も恋人もいない、家族との縁も薄い、身体が枯れ木のようになるまで頑張っても人生が思い通りにいかない…そんな時でも歌を聴きながら、どうにかこうにか歳を重ねてきた気がする。
中学生の頃、最初に好きになった歌手はサイモン&ガーファンクル、その次がビートルズ。そこから広がっていって、今まで聴いてきた曲をジャンル分けしたら、オルタナティブ・ロックが9割、邦楽とポストクラシックが0.5割ずつくらい。
曲の歌詞、メロディ、鼓動のようなドラムの響き、アレンジに使われている何の楽器か分からない音、あらゆる音が混然一体となって私の体温を上げ、もう少し生きていようかという気力を取り戻す。
でも、残念ながら私には音楽について話す友人がいない。数年前から通っているボイストレーニングの先生とは少し話すけれど、レッスンの合間だから、音楽に対する積年の想いを話し尽くすほどの時間は無い。だからずっと思っていることをここに書いてスッキリしたいと思う。それは「アー」の曲についてだ。
階段状になった「アー」というコーラスの音が好きで、バックコーラスにこの「アー」が入っていると、一瞬で舞い上がるような気分になる。もしかしたら、”カノンコード”っていうやつかもしれないけれど、バンドをやったことがないからよく分からない。マーク・ロンソンがいたら、すぐに解説してくれるだろうに… ※マーク・ロンソンはイギリス出身の音楽プロデューサー。AppleTVで『サウンドを語るwithマーク・ロンソン』という音楽制作に関するドキュメンタリーを見れます。
私のお気に入りの「アー」の音が入った曲を紹介したい。1曲目はカーペンターズの『Goodbye to Love』。小学生の頃、初めて好きになった「アー」の曲だ。全体が約4分の曲で、「アー」は2:23~始まる。つまり曲の約40%くらいが「アー」になっている。
カレン・カーペンターの声とエッジが効いたギターが絡み合い、歌詞が「アー」だけなのにずっと聴いていたくなる美しさ。
2曲目はポール・マッカートニーの『Another Day』。歌詞がまるで若い頃の私のようで切ない。コーラスは当時の奥様リンダさん。温かい声で0:27~0:34、1:42~1:49、2:57~3:04辺りに「アー」と入っている。
3曲目は邦楽からGLAYの『SPECIAL THANKS』。ボーカルのTERUさんのコーラスは、メインの歌詞を歌う時よりも少し掠れたような感じで、コーラスだけでコレクションを作りたいくらい好きだ。別の曲だが『とまどい』の2:00~2:04に入っている文言不明のコーラスが一押し。さて、この『SPECIAL THANKS』では、2:12~2:16/2:21~2:25、3:52~3:56/4:03~4:07に「アー」が入っている。晴れた日に電車に乗っていて、この「アー」を聴くと、ここは天国かな?と思えるほど景色が美しく見える。
最後はblerの『Under the Westway』。1:04~1:44、2:06~2:24、3:03~3:21に断続的な「アー」。センチメンタルなメロディと力の抜けた「アー」がマッチしている。
探せば他にもたくさんあると思うけれど、とりあえず、今、思いついたもので。コーラスでなくても、The Fratellisの『Flathead』や、Keaneの『Leaving So Soon?』のように、序盤から「アー」でグイグイ押してくるような曲もあるし、また私の「アー」の曲リストが溜まったら投稿するかもしれない。