くらしのこと#2 アコギ
高校生になる頃にはサンタさんと会話ができるようになっていましたので、その年のクリスマスプレゼントにアコースティックギターをお願いしました。
なんならサンタさんと一緒に出歩く術も身につけていましたので、近場のショッピングモールに入っている楽器やさんへ連れ立って出かけたことを覚えています。
てきとうな1本を手にとって、それがわが家へやってくることになりました。価値を実感するためにも、お値段をちゃんと見ておくべきだったなあ、と今になって反省しています。
よくある、バンドのギタリストに憧れて、というやつです。エレキでは機材なり何なりと荷が重いので、狭い賃貸暮らしでも手軽に弾けそうなアコギを選びました。
手軽に弾けそうなのは見た目だけで、そんな簡単に弾けるようになるわけがありません。もともとピアノを習っていたためか、弦を押さえるだけで指先の感覚がやられることに耐えられず、また一日坊主な性格もあいまって、結局ギターを弾けるようにはなりませんでした。みんなどうしてあんないとも簡単そうにジャカジャカ弾けるんだろう、と思うばかりでした。
で、気がつけば早10数年。
布製のケースにくるまったまま置き物と化していたアコギを、今年に入ってから引っ張り出してきました。
すこしばかり暇を持て余す日々が続きましたので、なにか有意義なことをしよう、と考えた時に、ちょうどいいものがあるじゃないかと思い至った次第です。
便利な世の中になりました。
初心者向けの練習方法が紹介されているサイトを指南書に、取り急ぎチューナーとして使えるアプリをダウンロード(ギターと一緒に購入したチューナーは電池切れですぐに使うことができなかったので)。弦をきゅいっと回してチューニングを合わせたら、基礎となる指の運動からスタートして、コードをひとつずつ練習していきました。
ここまでの一連の流れを、思い立ったその日に、自室から一歩も出ることなく、しかも無料でできてしまうのですから、どえらい時代になったもんです。
それから毎日こつこつと練習しました。
ローコードはひととおり覚え、Fコードも運がよければ鳴るようになり、簡単なギター譜に手を出すことができました。
残念なことに、ここから先が続かない。
一日坊主の本領発揮です。
安いけれどカポも買って、さあ1曲かっこよく弾けるようになるぞと意気込んでいたはずなのに…。
別の趣味やら予定やらに気を取られているうちに、すっかりアコギとは疎遠になってしまいました。
今も部屋の片隅にたたずんで、こっちを見てはいるのです。存在は毎日近くに感じています。
もう一度、手にとるまでの距離が長い。こうなるとしばらくは難しいでしょう。
努力できることは才能だとよく耳にしますが、ほんとうにそのとおりだなあと思います。何事も地道に続けられてはじめて大成するのですね。
まあ、無理をしても仕方がありません。
また気が向く日が来ることを、あまり期待はせずに、のんびりと待つことにしようと思います。
なしこ