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「刺さってしまった」

【はじめに】

まはるの頁にご来訪いただきありがとうございます。
今日は、2023年執筆の作品をお読みいただきます。
皆さん、歌はお好きですか?
私は、幼い頃から、歌を聴くのも歌うのも大好きで、家ではよくアイドルの真似をしていました。
当時、TVでは「歌番組」が隆盛を極め、毎日どこかしらのチャンネルで「歌番組」が流れていました。
恵まれていた時代だったと思います。
お読みいただく内容は、昨今話題の「シティポップ」について。
よく知っている方には、懐かしい気持ちで。
初めての方には新鮮な心持ちで、エッセイを味わっていただけたら嬉しいです。


(1)「シティポップ」って何?

「シティポップ」
昨今、巷を賑わしている言葉だ。
2010年代後半から話題になっていたらしいが、最先端の流行に置いていかれるようになった私は、去年の終り頃に漸くこの言葉を認識した。
ただ、あまり興味を持てなかったので、「そうか。そのようなものが流行っているんだな」という程度で放っておいた。
しかし、ここ数週間で事態は一変した。
この10月から、「パリピ孔明」というドラマが放映されている。
その第一話で、ヒロインが「真夜中のドア」という曲を歌っている場面があった。
ドラマが終わると、私はヒロインよろしく、少し気取って歌い出した。
♬ stay with me 真夜中のドアを叩き~ ♬
一緒にドラマを観ていたパートナーが、「もう覚えたの?」と驚いたように聞いてきたので、ニッコリと答えた。
「昔、流行ったんだよ。よく歌ってた」
そう、「真夜中のドア」は1979年発売の曲なのである。それが今、「シティポップ」として世界的リバイバルブームとなっているらしい。
この時、私はハッキリと「シティポップ」に興味を持ち、その意味を調べてみた。
きっかけは、竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」という曲らしい。
発売は1984年。しかし、発売当時はヒットしなかった。
それが、2010年代に入り、ある海外のDJがYouTubeに非公式にアップした動画を発端に、カバーやリミックスが行われるようになり、じわじわと海外で人気が高まっていったのだという。
私も試しに聴いてみた。2年前に改めて公式にアップされた動画は既に3,000万回以上再生されている。曲に付けられているコメントが軒並み「英語」で、世界中での人気を確かに頷かせた。
この曲自体はそこまで私には響いてこなかったが、「シティポップ」のブームとそれがどのような「音楽」を指すのかは大体理解できた。

(2)夜は音楽と共に

さて、ここで少しだけ現在の私の生活サイクルの話をしようと思う。
毎晩、多くの薬を服用して眠るので、「朝」が圧倒的に弱い。
特に、今は通所をしている施設をお休みしているので、起床は大体10時過ぎだ。
しかも、2度寝をしてしまう。
その代わり、「夜」には滅法強い。夜中の2時だろうが3時だろうが、へっちゃらで起きている。
私が最も元気で、そしてリラックスをして過ごせる時間帯は「夜」なのだ。
夕食を済ませ、歯を磨くとそこからは晴れて「自由時間」。
TVを観る時もあるが、大抵はYouTubeで音楽を聴いては歌っている。
ドラマで「真夜中のドア」を聴いて以来、私はすっかり80年代のちょっとイケている曲を聴くのが楽しくなった。

(3)Nice!おすすめ

YouTubeで何曲か気になる曲を検索していると、そのうち「そんなあなたにおすすめ」とばかりに、YouTubeの方で勝手に選曲をして、提案してくれるようになる。
大抵は「的外れ」なのだが、時折、「Nice!YouTube」と拍手をしたくなるような良い仕事をしてくれる時がある。
1週間ほど前、「フライディ・チャイナタウン」という曲が「おすすめ」に現れた。
「わぁ~!懐かしい!」
この曲との出会いは、当時小学生だった私には結構鮮烈だった。
現在では、廃刊になっている芸能雑誌に「平凡」というものがあった。
毎月、親にお小遣いを貰って、ウキウキと本屋に向かっては購入し、1文字も漏らさない勢いで読み漁っていた。
歌番組全盛期。
アイドル達はどこまでも華やかで、誰もが心をときめかせてTVに噛り付いていた。
勿論、私もその一人で、当時の流行りの歌はフルコーラスで歌えた。
その為の大切な教科書が、「平凡」に付録で付いて来る「歌本」だった。
人気絶頂のアイドルの新曲が「歌詞」「譜面」と共に、本人の写真付きで掲載されていた。
ある時、その「歌本」に、泰葉さんというひとの「フライディ・チャイナタウン」が載ったのだ。
「えっ?!誰、コレ」
新人アイドルとしても話題にはなっていないし、凄い違和感。
後に、この泰葉さんが、あの「どーもすみません」で一世を風靡した故・林家三平さんの娘だと知り、合点がいった。
要するに、「親」の威光が効いたのだ。七光り、今でいう忖度である。
それでも、「フライディ・チャイナタウン」は耳に残る良い曲だった。
まだまだ子供だった私には「音程」も「歌詞」の意味も難しくて、歌えるようにはならなかったが、印象的な曲の出だしはいつ迄経っても忘れられなかった。

(4)すっかり、虜

ここはひとつ素直に「おすすめ」に従って、何十年か振りに「フライディ・チャイナタウン」を再生してみた。
(なんて良い曲なんだ!)
「メロディー」にも、どきりとさせられるようなエキゾチックな「歌詞」にも瞬く間に惹かれた。
そう、文字通り今の私に響いたのだ。
何かに取り憑かれたようにYouTubeで繰り返し聴いていると、この「フライディ・チャイナタウン」が多くの歌手に「カバー」されていることに直ぐに気が付いた。
アレンジも様々。当然歌い方もその人の個性が出ている。
私は、その中でもとりわけ、「藤井風」さんと「MayJ.」さんのカバーが気に入った。
藤井さんは自在にピアノを操りながら、弾けるように歌っている。
MayJ.さんは確かな音程で一語一語丁寧に聴かせてくれる。
本家の泰葉さんの味わいにはやはり敵わないが、曲の魅力がそれぞれに表現されている。
私は目下、この3人の「フライディ・チャイナタウン」をヘビロテである。
また、「カバー」だけでなく、「Tiktok」では、若い男性達がこの曲をバックに実に楽しそうに踊っている。
どうやら、「フライディ・チャイナタウン」は、現在の若者にも刺さり、「シティポップ」としての地位を確立しているようだ。
実際にYouTubeの再生回数も791万回である。私の想像を遥かに超えた驚異的な数字だ。
また、先述した「プラスティック・ラブ」同様、泰葉さんの歌っている動画には、「英語」で書かれたコメントが「これでもか!」と並ぶ。
これは、もはや「世代」も「国境」も越えたヒット振りだ。

(5)懐かしいだけでは終わらない

昭和の時代、一番の娯楽はTVだった。新しい「歌」も「情報」も、その殆どをTVが教えてくれた。
しかし、令和の現代では幾らでも新しいものを取り入れる媒体がある。
若者達が「フライディ・チャイナタウン」を知ったきっかけはYouTubeかTiktokか、きっと様々なのだろう。
メディアやSNSを自在に操り、古き良き文化を存分に生活に取り入れて、自分達の「もの」にして楽しんでいる彼らの姿は、アラフィフの私には眩しい。
なにより、約40年も前の曲がこのように再評価されるのは、発売当時を知っているものとしては、実に嬉しい。
「歴史」は繰り返す。
ファッションなど最たるものだが、昔流行ったスタイルが、何十年後かに新鮮なものとして受け入れられる。
私もレトロ感のあるワンピーズなどが大好きだ。
時を経て「懐かしさ」が「新しさ」に変わる。
これからも「シティポップ」として、様々な曲にスポットが当たることを期待している。
相変わらず難しい「フライディ・チャイナタウン」だが、YouTubeに合わせて歌っている時、私は極上の気分になる。
出来ればこの曲と共に、洒落こんで横浜のチャイナタウンなどを歩いてみたい。

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