昭和、平成、令和からそれぞれ一曲ずつ好きな曲を紹介する。
【昭和】 卒業/斉藤由貴
ああ卒業式で泣かないと 冷たい人と言われそう
でももっと哀しい瞬間に 涙はとっておきたいの
初めて聴いた時、このサビの歌詞にとんでもなく衝撃を受けた。卒業ソングは数え切れないほど存在するが、こんな歌詞、他にあるだろうか。
「クラスメイトや先生との別れ」<「悲恋」という比較の描写があまりにも斬新でまたどこかリアリティーを覚える。
セーラーの薄いスカーフで 止まった時間を結びたい
だけど東京で変ってく あなたの未来は縛れない
これはBメロの歌詞。セーラーの薄いスカーフが未来を縛れない理由は二つあると思う。一つ目、それは過去を象徴するものだから。二つ目、それはあなたの固い意志に基づく未来を縛れるほどの強度を持っていないから。誰の意志も作用しない浮遊状態の止まった時間を結ぶのが限界なのだろう。
イントロのリフは桜の舞い落ちる情景を想起させる。また、Aメロとサビにおける一時的な転調は歌詞に呼応しているようにも思われる。
【平成】 丸の内サディスティック/椎名林檎
「固有名詞が登場する曲ランキング」があったとしたら、一位になるような気がする。
マーシャルの匂いで飛んじゃって大変さ
毎晩絶頂に達して居るだけ
ラット1つを商売道具にしているさ
そしたらベンジーが肺に映ってトリップ
初めて聴いた時、「マーシャル」と「ラット」、そして「ベンジー」を知らなかった私は「マーシャル=香水」、「ラット=ネズミ」、「ベンジー=医学用語」だと思っていた。だから、以下のように解釈していた。
「私はあなたの香水の匂いでおかしくなっちゃう。おかげさまで毎晩絶頂。そんな私はネズミで生計を立てている。するとある日、MRI検査でネズミの病原菌による病に罹患していることが判明。即死。」
サビの「飛んじゃって大変さ」の「飛ん」と「大」はどちらもファ#。そして、「飛ん」に対するコードはG7(ソ、シ、レ、ファ)、「大」に対するコードはCm7(ド、ミ♭、ソ、シ♭)。つまり、不協和音(ファ#とファ、ファ#とソ)が生じている。この不協和音が独特の浮遊感を演出しており、まさに「飛んじゃって大変」な情景を描写しているのである。
【令和】 創造/星野源
あぶれては はみ出した
世をずらせば真ん中
彼の歌詞は、この世の中においてマイノリティの人々、「弱者」というレッテルを貼られている人々を鼓舞している、そんな気がする。
ゲームの効果音は確か全部生演奏だったと思う。恐らく、彼のこだわりだろう。何年か前にある番組で「打ち込みもいいけど、僕はやっぱり生にこだわりたい。生演奏で踊ってほしい。」と発言していたのを思い出した。
打ち込みやボカロ、AIなどが音楽の世界に台頭してきている中で、人間だけが持っている強みといえば、やはり血の通った歌唱、生演奏だろう。
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