見出し画像

【短文エッセイ】通学

先日の通学途中、思ったより早くに駅に着いてホームの椅子でパンを食べていた。たしか、6つ椅子が並んでいて、左から2番目の席に座り、左端にカバンを置いた。右端から2つはサラリーマンが使っていて、真ん中2つは空いていたが、僕が座った右隣には誰かが置いていったゴミがあった。数分後、30代後半から40代くらいの男性が真ん中の椅子に座った。

僕の隣の隣。男性は、ゴミに気づいたようだった。すると彼は、特に悩むこともなく、ゴミを手にしてゴミ箱を探しに行った。近くにあると思ったのだろう、「この駅のゴミ箱はここからは遠いんだよ」と心の中で思いながら、横目で様子をみていた。
荷物を椅子に置いたままゴミ箱を探しに行った。探しても見つからなかったのだろう、少しすると戻ってきた。そして、自分のカバンにゴミをいれていた。

僕はできた人間ではないからゴミに気づいていたが、見てみぬふりをしていた。だけど、この男性は迷わずに拾って、自分のゴミであるかのように始末した。

   ものすごく感心した。
「いい人もいるもんだな」と。

で、電車に乗ったら次はお前の番だよと言わんばかりに座った座席の窓際にティッシュのゴミがあった。正直なところ、普段なら無視していただろう。だけど、あんなものを見たんだ、さすがに無視することへの罪悪感を持った。誰が捨てたかも分からないティッシュには触れたくもないだろう。渋々拾った。

いい人の行いを見ると気持ちがいい、偽善だろうが、なんだろうがどうでもいい。
ただ、あの時、僕の目の前にいた人間の行動に関心した。
ただそれだけ。


よろしければサポートお願いします。 もし、いただけた場合のサポートは全額、生活費に充てさせていただきます。