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草原にて

星も見えない
どこまでも暗い夜
ごうごうと鳴る夜の咆哮と
草原を吹き渡る風の音だけが響く

僕はひとりきりの部屋で
夜が明けるのを
時が訪れるのを
ただじっと待っている
わずかに僕を照らす
ほの暗い灯りをみつめながら
僕はその時が来るのをひとり待っているのだ

ふとすべての音が消えた
僕の背中に緊張が走る
そして訪れた衝撃
ものすごい痛みと焼けるような苦しみに
僕は叫びそうになるのを必死にこらえる

僕の背中に今何かが生えようとしている
音のない暗闇の中で
永遠とも思える苦しみに僕はただ耐え続けた
これは試練なのだ

そして痛みが和らいだと思った瞬間
すべての音が僕の耳によみがえる
ごうごうと唸る夜の咆哮と
草原を吹き渡る風の音
終わったのだ

僕は振り返って背中を見る
背中にはオーロラのように輝く
カラスアゲハの翅があった
僕は大人になったのだ

だんだんと遠のいて行く夜の音を聞きながら
僕は夜明けが近いことを知る
まもなく明るい空の下
僕の美しい翅を皆が見ることだろう


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