
Photo by
kazumaogiso
廃園
朽ち果てた誰も訪れる者もいない廃園
寂れた石畳の道をひとり歩く
色褪せた花壇には花一輪さえ咲いてはおらず
春を謳歌していた面影はどこにもなかった
かつてこの花園で一輪の花を摘んだことがあった
それはまだ若く美しい少年であった
その頬はうっすらと薔薇色に染まり
吸い込まれるような深い瞳は青スミレ
そして私を誘惑して止まない唇は桜草のようだった
あの日の燃えるような接吻を私は忘れることができない
すがるような瞳で私をみつめていた
少女のような唇の美しい少年
一生に一度の恋であった
今でも消えることのない胸の痛み
あれからあの少年とは二度と会うことはなかった
若い日のただ一度の恋は
今では遠い思い出となって私の胸に息づいている
あの頃の情熱はもうとうに枯れてしまったが
この身が朽ち果てたとしても忘れることはないだろう
あの燃えるような薔薇の花の下での接吻だけは
この花園で眠る美しい思い出よ
このまま私の胸の奥に深く深く埋めてしまおう
思い出はいつまでも美しいままのほうがいい
これから歩いて行くひとりきりの道に
ただ輝く宝石のように永遠に眠っているがいい
いつかまた出会えることを夢見ながら
いつかまた花咲けることを祈りながら
Adieu,mon amour
安らかに眠れ
そしてまた私も潔く朽ちて行こう
この寂しい廃園のように