#一日一短歌 2022年11月分
11/2 迷わずにいられるようにその声を抱いて歩いた乗り換えの駅
通勤中はずっと音楽を聴いている。周りの音が聴こえないので、逆に迷ったり間違えたりしてしまう。
11/3 すごくありふれた種にも仕掛けにも気づかずいてよ恋に落ちてよ
「すごく」要らなかったな。即詠なのでそういうこともある。
11/3 帰りたい場所になりたい きみにしか見えないまるい月になりたい
夜道も煌々ときみだけを照らしていたい。
11/4 小説のページをめくるように恋 落ちれば風が吹きつけてくる
つい恋は落ちてしまうし、恋に溺れてしまうし、沈んでしまう。恋は沼。
11/5 ばらばらにされてしまってこれは指、あの日のきみに触れかけた指
恋をすると自分が自分じゃなくなったようになってしまうの、不思議ね。
11/7 落ちるより浮かんでいたい風がいま背中で羽になったら恋だ
珍しく、恋を落ちるものにしなかった回。
11/7 何食わぬ顔して戻る日常はたとえばきみをうしなったとして
何食わぬ顔が、果たしてできるかどうか。
11/10 きみという海に向かって絶え間なく流れる水になってしまうよ
昨年はすきなひとを星にしてしまいがちだったんだけど、今年は海にしてしまいがちな傾向があった。これはその端緒かも。
11/10 今日吸った酸素を全部きみにあげる 沈む意識の底で笑って
DECO*27の『二息歩行』が好きで、「呼吸を共有する」ってモチーフを詠みがちなとこある。
11/10 街にまだきみの気配が残ってて吸い込む空気も甘い気がする
この日の前日が、ポルノの暁ツアーの神戸公演だったのでそういう気持ちだった。
11/11 空駆ける飛行機雲のはじまりを見つけてくれるきみのまなざし
自転車の後ろに乗せた息子が、珍しく電車以外のことを見つけて教えてくれたので印象に残った。
11/13 届かない遠さだとして諦められるかどうかはまた別のお話
基本的に「諦める」ということを知らずに生きてきた人生なので、どんなに遠くても同じ次元に生きてるならワンチャンあるやろと思ってしまう。恋に限らず、夢でもなんでも。
11/13 輝けば輝くほどに眩しくてきみを星だと思いたくない
輝いているきみはとても好きなんだけど、星は次元の違う存在なので。
11/14 振り向いてほしすぎるから真冬でも汗をかくほどきみに手を振る
冬にかく汗、大変に不愉快だよね。
11/15 ぬかるんだ水に満たされ呼吸すらままならなくてこれが恋かと
恋は沼なので。
11/17 奥底で干からびているみずうみにきみのことばをそっと落とした
きみのことばは水だから、いつもわたしを潤してくれるはずなんだよ。
11/17 とろとろの満月みたいなオムライスやわく崩して銀のスプーン
自分が作る料理の中で、オムライスが一番好きだし美味しい!
11/21 このままでいいわけなくて境界線上を行ったり来たり行ったり
反復横跳び!!
11/21 知らんぷりしてればいいよ寒椿見えないところで泣いてやるから
ピンクの寒椿の花言葉は「控えめな美」だぞ。
11/22 どこまでも優しいきみが飼っているけものが暴れるところが見たい
ポルノグラフィティを1階8列目で観れることにバグって詠んでしまった。原寸大だった。
11/24 ラブじゃないソングシェアしていいねってきみが笑って(もう戻れない)
今の若者はすぐ好きな曲シェアできていいなあ、自分の頃はまずCDという現物を貸し借りできるまで仲良くならなきゃいけんかったんじゃが、と思わず年寄りムーブかましてしまう。
11/24 きみと目が合った瞬間熱源になった(マスクがあってよかった)
マスクがなかったら絶対バレてた感情ってあると思うんだよね。
11/25 見るからに崖だったのに飛び込んだ 加速したまま落ちていく恋
見るからに崖でもつい飛び込んでしまう人生だった。
11/25 叶わない想いは光る星になる夜空のいちばん低いところで
そのうち見えなくなっちゃうやつ。
11/26 たいせつなものひとつだけと言われてなにも選べなかった 断崖
断崖って絶望の言い換えのイメージある。
11/28 雨の日に閉じ込められて繰り返し再生される夜があること
これは本当にあって、あの夜に聞き分けのいい人間になってしまったことをわたしは一生後悔すると思う。
11/29 降りそうな空だったのに雲間から光 泣いてもいいって言って
そういう瞬間に居合わせることってあるよね。
11/29 目を伏せたきみが爪弾く六弦は「愛してる」って伝わりすぎる
普段めったに晴一さんのことを詠むことはないんだけど、ちょっとやってしまった。ギターを六弦って呼んじゃうのはアジカンのゴッチのせいだ。
11/29 指先の熱がじくじく胸を刺すこれはいいことじゃないと知ってる
いいことじゃないと知っててものめりこんでいくことってある。
11/30 恋はまだ解けきれぬ謎 どこまでも何度でも落ちてしまう海底
ついに恋が海になってしまった。果てしない。