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#一日一短歌 2022年3月分

 年度単位で生活しているので、2021年度の締めくくりを感じながら生きたひと月でした。


3/1 とめどなく降りそそぐから愛だって気づかないままとけて流れる
 どんな愛も、注がれているうちはあまりありがたみを感じないもので、失ったときに改めて理解するんだろう。

3/2 ポルノグラフィティ「ネオメロドラマティック/ROLL」のリリース日だったので、この3曲をモチーフに短歌を詠んだ。下にまとめています。

3/3 行かないで、行かなくちゃ、まだここにいて 不協和音の発車メロディ
 普段電車乗るときはイヤホンをしてるから、通勤電車の発車メロディを知らない。

3/5 気づいたら青いほのおが住みついて揺らめいている ここだけに春
 NHK短歌「恋の始まり」に出そうとして忘れてたので、ここで供養。赤い炎より青い炎の方が温度が高いって知ってる。

3/6 何色を集めれば早く幸せに辿り着けるか競争しよう
 「幸せについて本気出して考えてみた」リリース日だったので詠んだんだけど、来年絶対リベンジしたい。

3/6 ただ光る星に託した道しるべ 僕の孤独をやさしく照らす
 「輝く星の下で」リリース日だったので詠んだんだけど、これも来年リベンジしたい。やっぱり慌てて詠むとだめだなあ。

3/7 淀川は毎日色を変えるから虹色になった時を狙って
 時々とんでもなく濁ってたり、びっくりするほどきらきらしてたりして、水面って見てて飽きないね。

3/8 はじまりの鼓動はいつも君の声めざめはいつも君が鳴らす音
 「ロマンチスト・エゴイスト」リリース日だったけど、時間がなかったので『Heart Beat』で詠んだ。来年は全曲詠みたい。

3/9 卒業を待つ子どもたち 春の風あびて飛びだす背のたくましさ
 久しぶりに卒業生を見送った年だった。わたしにとって3年間はあっという間だったけど、彼ら彼女らにとってはどうだったろう。

3/10 帝国の意味を知ってる 永遠にきみがわたしの世界を統べる
 世界史習いたての中学生のように、歴史用語を短歌に詠み込んでしまいたいブームが続いている。

3/11 聴いている曲とだんだんずれていく鼓動わたしも音楽だから
 音楽を聴きながらだと一定のスピードで数を数えられないのが昔から不思議だった。それに対するひとつの答えにしたい。

3/14 雲間からさし込むひかり まだいまのわたしを諦めないと叫んだ
 よくある天使のはしごってやつを見かけたので、叫びたくなった。実際に叫ぶとおかしな人なので、Twitterで短歌にして叫ぶ。

3/14 あたたかい闇に沈んでいたいから緑のままの林檎をかじる
 ディズニープリンセスで一番好きなのは白雪姫。わたしはいつまでも女の子でいたいタイプの人間。

3/14 その愛で爪の先まで毒されてきみだけすきなままで死にたい
 そういう死に憧れる。

3/15 伸ばすのもためらうほどに手のひらが焼けつくひかりのきみに会いたい
 推しのきみよ、早くライヴで会いたい。

3/16 もうこんな去りゆく冬をおもうときマイバッグには最後のみかん
 瀬戸内出身なので地元にいた時はどこからともなくみかんが湧いてたんだけど、大阪では誰からも貰えないので自分で買う冬が続いている。みかんがだんだん高くなると、冬の終わりを感じるようになった。

3/17 死すらまだ救いにならずひとりよりふたりがいいと月並みな嘘
 「ふたりでいればしあわせだね」って言わなきゃいけない瞬間ってない?

3/18 さみしさを冬の終わりのせいにする ひとりの部屋にあたたかい雨
 久しぶりに降った雨は、春のはじまりのようなあたたかさだった。

3/19 親指の挿し込まれたる八朔の黄色に染まる母の爪先
 因島から届いた八朔を見ながら、実家にいた時はいつも母が八朔を剥いてくれていたことを思い出した。

3/21 愛だって確かめないまま触れるからこぼれる雨を拭いきれない
 確かめろ、いつだってそこに愛があるかどうか

3/21 この夜にあらゆる愛が巡るとき重ねてしまうきみの指先
 愛にはいろんな形があるんだよなあ、とぼんやり思った瞬間。

3/23 星々ときらめく汚泥 きみからの愛はわたしのすべてではない
 すべてだと思われるのも、なんか癪じゃないか。たとえすべてであったとしても。

3/23 あをによし奈良線をゆく車窓から新たな春のみどりまぶしい
 近鉄の新型観光特急「あをによし」の情報が解禁になった日。まだ乗れてないんだよなあ。

3/24 その星はわたしの太陽 だれよりもわたしを照らす熱いひかりだ
 すきなひとを星にしてしまうシリーズ。わたしのすきな(すきだった)ひとはみんな星にされている。

3/25 桃色の星がこぼれる真夜中にきみの秘密を教えてもらう
 かわいい秘密ならなおよい。

3/29 「おかあさん百人いるね」微笑んだ合わせ鏡の君も百人
 ホテルのお手洗いで初めて合わせ鏡を見た子の発言がとても可愛かった。

3/29 曇天の海も海だよ手のひらを熱く湿らすきみが太陽
 沖縄に旅行に行ってました。まあびっくりするくらいずっと曇天で、夫はとっても残念がっていた。わたしは夫とどこかに行けるだけで豪雨でも雷雨でも楽しいんだけどね。

3/29 足跡は波にさらわれもう二度と呼吸を止めるなんて言うなよ
 曇天でも沖縄の海は亜熱帯ってかんじで全然表情が違った。死にたい気持ちになんかならなさそう。

3/30 星も月も見えない場所にきみといてなんて明るい旅先の夜
 見えなかったのは曇天だったからですが、それでも本当に楽しかったのですよ。

3/30 殴るようにトランクを閉め行き先は海、終わりのない海に向かうよ
 旅行に合わせてトランクを新調したら、ものすごく閉めるのが難しいタイプで、いつも勢いよく飛び乗って抑え込まないと閉まらない。そのうち割れそう。

3/31 空港の誘導灯がひとつずつ春の別れを照らす夕暮れ
 そんなわけでこの日に沖縄から大阪に戻った。那覇空港が凄い人出だったのは、沖縄から都会へ出ていく人を見送るためなのだと気づいて搭乗口で目が潤んだ。まだあどけない青年の、不安と期待に満ちた表情と、そんな彼に手を振る友人たちというシーンにいくつも出くわした。青年は都会で何を感じて、友人たちはその背中をどのように思い出すのだろう。ひとりひとりに物語があることを感じた旅行の終わり。わたしたちも、新しい春に向かう。





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