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#一日一短歌 2022年2月分

 2月も欠詠なしでした。一日一首詠むことが、だいぶ日常に根付いてきたような気がした1か月でした。


2/1 胸に抱く単語帳には譲れない夢への海図書き込まれおり
 通勤途中の電車で、大学入試に向かう人たちに遭遇。みなそれぞれ最も信頼している参考書やノートを開いていた。ここにいる全員が希望通りの花を咲かせますように。

2/2 流星に魔法をかける歌声は未来をひかりで満たしてくれる
 今まではなんとも思ってなかった曲が、急に身体のどこかに沁みてくるときがある。

2/4 青空はすべての罪を暴くからきみの背中に伸ばせずいる手
 青空のまぶしさを思う日。

2/4 神の名を身につけること 敬虔と言うには少し過ぎたる祈り
 でっかくアーティスト名が書いてあるバッグを持ち歩いてると、まるで自らの信仰を告白しているかのような気分になる、というのは言いすぎだろうか。

2/7 吐く息の白さは胸に満ちているはるか三千世界のかなしみ
 都々逸詠みでもある身として、「三千世界」はいつかもっとうまく使ってみたい語句のひとつ。

2/7 しずかなる戴冠 きみのなまえごとこの人生に組み込むための
 結婚して名字が変わることは、わたしにとってまるで戴冠のように神聖で壮大なことだった。とにかく夫のことが好きだったから、どんなにめんどくさくてもとても嬉しかったのを覚えている。

2/7 どこにでもつれてってくれ晴れ晴れと明るい電車は動く監獄
 周りの人がみんな暗い顔をして俯いてたのが印象的だった。

2/8 軽やかにぼくらを追い越せ新快速 重い空気に飛び込む鈍色
 乗ってる電車が隣の電車を追い越したり、追い越されたりする瞬間が好き。

2/9 切り裂いた空からあふれる夕焼けの鮮やかな赤むきだしの傷
 切り裂いた空の息の根を止める短歌を作ろうとしたけど、「それってメリッサじゃん……」って気づいて軌道修正。こうして気づかないうちに盗作してしまいそうで怖い。

2/10 ポルノグラフィティ『瞳の奥をのぞかせて』で連作を詠みました。

 わたしの物書き脳には井上秋緒と新藤晴一の魂が息づいているけど、どう逆立ちしたってこんな歌詞は書けないかもな……と実感させられる。悔しい。でも好き。

2/12 なにもかもゆるしてほしい朝 きみのパジャマを抱いてあかるい二度寝
 今はもう二度寝してると子どもたちに起こされてしまう。つらい。

2/12 張りつめた糸を弾けばびりびりと揺れるから、ほら、もっとさわって
 性癖の歌が時々出てくる。

2/13 面影はやさしく頬を撫でる風 手を伸ばしても遠いあなたの
 リリース日だったので、ポルノグラフィティ『あなたがここにいたら』をイメージして詠んだ。この曲は続ポルツアーのスペシャルセッションで聴いて印象ががらっと変わった曲。

2/14 チョコレート溶かした甘いキッチンでそっと唱える最古の呪文
 バレンタインデー!「テンパリング」って言葉とか、チョコを溶かして固めるだけの無為な作業とか、本当呪術みたいだったなって思う。

2/16 くちびるをなぞるくちびる 他愛ないいきものだって暴いてしまう
 性癖の歌……

2/16 爪先にほのかな熱情 眠れない夜にあなたの声を覚えて
 急にそういう短歌を詠みたい瞬間もあるんだよ。

2/17 きみの字で名前を呼んで 濃紺のインクが胸の奥まで滲む
 万年筆にはまって、夜中に好きな色で好きな言葉を書く遊びをしている。万年筆で書く字は、普通のペンで書く字と違って、色が滲んだり太さが違ったりして面白いので、つい好きな人の名前を書きたくなる。

2/18 すきすぎてだめになる、って泣かないでだめになってよ死なない程度に
 自分、恋愛で身を滅ぼすタイプの人間なので、若い時はよくだめになってたけど、誰かをだめにしたことはなかったな。

2/19 きみが生きわたしが生きていることの唐突なまでの奇跡、それだけ
 唐突すぎるじゃろ、ってくらい唐突にそういうことを思って、それ以上の言葉にできなかった瞬間だった。

2/21 晴れやかな朝にうぶごえ あたらしいいのち報せる祝砲のLINE
 いとこに第一子が無事誕生、との連絡。もうとにかく休んで本当に休んでほしい。お母さんの元気が赤ちゃんの元気。お祝いを受け取るのはその後でも遅くない。(でもすぐLINEした)

2/21 間違いに気づいてももう遅いから振り返るだけ乗り換え地点
 この日ではなかったはずだけど、うっかり乗り換えをミスる瞬間がある。誰にも悲しみをぶつけられないつらさの最たるものだと思う。

2/23 なんとなくきみの名前を書いてみたペン先溶かす熱が滲んだ
 万年筆あそびにハマってしまった。惚れ込んだ大好きな色で書くのは、いつだってすきなひとの名前なんだよなあ。

2/23 混ぜられた色は澱んで救えない恋文 それでも届いてほしい
 夜中にうっかり書いたラブレターは汚く澱んでしまう。取り繕う言葉を選べないからかな。

2/24 やわらかい積み木のように響く音 До свидания, Здравствуйте.
 ロシアがウクライナへ侵攻を開始した日。下の句は「さようなら、こんにちは」という意味。大学時代に選択した第二外国語のロシア語の授業で、念仏のように読み書きさせられた言葉だ。同じ言葉を繰り返すだけの授業は退屈ではあったけど、わたしの世界を広げる力になった。そうやってわたしの人生に関わった国が、こんな形で歴史に名を残していくことが、今でもただただ悲しい。正義も悪も抜きにして、ただただ悲しい気持ちが続いている。

2/26 ポルノグラフィティのアルバム「WORLDILLIA」がリリースされた日なので、曲をモチーフにした短歌を詠みました。
 若さゆえの熱と危うさが昇華された曲で構成されたアルバム。通して聴けば中学生の頃の自分の熱まで思い出してしまって、胸がひりひり焼ける。

2/26 つぼみにはつぼみの矜持 えんぴつを掴んだ君のつよいまなざし
 年中も終わるこの頃、やっと息子が文字を書くことに興味を示した。示し出したら早いもので、あっという間にひらがなとカタカナと数字を書けるようになった。もうわたしの介添えを拒み、真っ白い紙に向かうそのまなざしに、彼の矜持を見た。

2/27 春 ふいに春 弾む風あたたかくコートの裏地たしかになぞられ
 想定以上に暖かい日だった。春はもうすぐ!

2/28 桃色の音に溺れて振り絞る吐息もこんなに近く聴こえる
 ポルノグラフィティのアルバム「foo?」のリリース日だったので、たくさん短歌を詠みたかったんだけどこれが精いっぱいだった。来年はリベンジしたい。


 だんだんアウトプットがしんどいと感じる日が増えてきました。ちゃんとインプットもしなきゃいけないなあと思います。

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