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#一日一短歌 2023年4月分

 心機一転!新職場でがんばるぞ!!とまだこの頃は希望に燃えていたような気がする。確か。


4/1 嘘つきはきみのはじまりくちびるでしか真実を探れないから
 エイプリルフール短歌。

4/3 するたびに夜はほどけて結ばれてからだの中に小さめの海
 性愛的なことをどれだけ詩的に表現できるかってのも短歌の楽しみのひとつだよね。直接的な表現も好きだけども。

4/3 人格を認められたる子の手には汗でしおれたきっぷ一枚
 この4月から末の息子も小学生になり、電車に乗るのに料金が必要になった。誇らしげにこどもICOCAをピッするところは何度見てもいい。

4/6 羨んだりするのだろうか太陽のような光を放つきみでも
 どんなにまぶしいひとでも「こうありたい」と思う気持ちがあるからこそ輝くんだろうな。

4/7 くちづけは嵐になってやわらかい心の奥を攫っていった
 風強い日だったんかな。

4/7 春驟雨わざと残した傷痕が痛むみたいな激しさだった
 雨強い日だったんかな。「春驟雨(はるしゅうう)」が読めなくて焦ったから読めない単語は詠みこまない方がいい。

4/8 あたたかい風に身ぐるみ剥がされてなおもすっくと立つ山桜
 因島に昭仁さんの桜を見に行ったら、ここんとこの強風ですっかり散り散りになっていた。瀬戸内はあったかいから、もっと早く来んといけんかったなあ。

4/10 袖余るぴかぴかの君あたらしい春あたらしいことのまぶしさ
   もうぼくはひとりで行くと汗滲む手でしっかりと我の手握り
   しっかりと児童となりて頼もしく名前を訊かれ黙りこくって

 小学校に入学した息子、当然ながら制服はぴかぴかでぶかぶか。突然単独での登下校になっても、防犯のため知らない人からの質問は無視する頑強さが頼もしい。がんばれ。

4/15 どうすればきみの心に傷痕を残せるだろう ぬるい雨降る
 ぬるい雨が降ったんだろうねえ。

4/18 春に咲く花の名前を手折りつつきみにすべてをゆだねてみたい
 どんな花を思い浮かべてたんだろう。やっぱり桜かな。

4/25 きみがくれる愛がこぼれて流れたらわたしを侵食する水になる
 当時地理で河川の浸食地形を教えていたので、たぶんそのせいだな。

4/30 恋はまだ心の内に貼りついてほろほろ沁みるディアマンクッキー
 ディアマンクッキー大好き~

4/30 誰よりも愛してるとは言えないで静かに飛ばす小さなハート
 ツイッターのいいねがハートになって久しいけど、ハートをつけるのってものすごい重い行為じゃないかってずっと思ってる。

4/30 ほうき星 ただ一度きりの邂逅を忘れてほしくなくて輝く
 見つめているひとを星にしてしまいがちだけど、星として見られていることもあるかもしれん、と思ったりもする。

4/30 街は雨 たどり着けない場所へ行くみたいに徐行していく電車
 大雨が降って、電車がゆっくり走ってたこと覚えてる。

4/30 積み上げてなお近づけず生きている世界が違うことを知るだけ
   わたしたちおんなじ夢を見てそして違う世界で生きているだけ

 こうやってこつこつと短歌を詠んでても切り拓けないんだよなと思うことは多々あって、でもこつこつやってくしかないじゃんとも思う。

4/30 好きだって言えば変わると知っている 溶けきりそうな氷が揺れる
 氷が溶けるというシチュエーションが好きなのはたぶんポルノグラフィティの『別れ話をしよう』のせいで、ときどき詠んでしまうモチーフのひとつ。

4/30 読み終えた本から落ちた栞から「知は力なり」と声が聴こえる
 これはほんとにあったシチュエーション。何読んでたときだったかな……

4/30 きみ以外みんな同じに見えるのは恋ではなくて呪いだろうか
 じゃがいもの呪い。

4/30 何もない夜より何もない朝の方がわずかにかなしいふたり
 次の約束もできないような。

4/30 まだきみは気づいていない 澄んでても溺れてしまう水があること
 異様に美しい水(川とか海とか)ってなんか怖くない?


 最終日にたくさん詠んで帳尻合わせようとしたけど、なんと6首足りませんでした。2023年度は一日一短歌のペースが崩れてしまったのですね。しんどすぎて。



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