#一日一短歌 2022年5月分
5/1 美しく咲けない花も花 曲がりくねった茎のたくましきこと
地元の農園に初夏の花を見に行った。自然の中の花々は多様性にあふれていて、この年になってもその美しさに驚く。
5/3 滲まないインクの青はゆるぎなく 神はわたしの中だけにいる
親戚が宗教の勧誘をしてくる。こんな頑強な意志を持つ人間ではなく、もっと人生や世の中に不安を抱く人にその崇高な教えを伝えてあげてくださいってかんじ。
5/5 ふるさとはベトナム料理屋が増えてわたしは異国に取り残される
でもそんなベトナム料理屋さん、とても美味しかったです。また行こう。
5/6 嫉妬だね ありふれすぎた結末のありふれすぎたオチは結局
「ありふれすぎた」という日本語はあるのか1回ぐぐった。時々急にそういう言葉に出会う。
5/6 ぽろぽろぽろ涙は軽い贖罪にすらならないね あ、ぽろぽろじゃいず
apologizeって単語、初めて出会ったときすごい語感だなって思った。全然謝罪感ないじゃん。なのに改まった謝罪の時使うんだって。まじかよ。
5/6 こぼれおちるメロディ ぽろり くちびるがなぞる音符を追いかける夢
昭仁さんと井口さんのコラボとその曲名が発表されてわ~~~~~~ってなって詠んだ。歌詞の内容も分かってなかったのにまあまあニアミスな歌詠んでるなあ。
5/8 万葉のまちをめざしてあをによし奈良のみやこは近くなりにけり
新しい近鉄特急「あをによし」、沿線住民として末永く愛していきたいかわいさ。改めて枕詞としての「あをによし」の用法を調べたりした。
5/8 馬鹿すぎる女としてしか生きられぬ時代があった母だあなたは
あの頃はそんな母を許せる時なんて来ないと思ってたけど、意外と許せてしまっている。まあそれもひとえにきちんと母が反省してまっとうに生きてるからですけどね。
5/9 真夜中の圧倒的なメロディで狂わせられたい自律神経
『MELODY(prod. by BREIMEN)』が本当に良すぎて、配信開始の瞬間(0時)に聴いたことに後悔したくらいだった。夢のようなコラボだよなあほんと。
5/9 黎明のしずかな熱が荒れ狂うわたしの世界をあたためてゆく
上記の感情を、もう少し一般化して詠んだ。
5/10 身勝手な愛をぶつける対象として鮮やかで透明なきみ
「推し」としてひとりの人間を愛することって業だな、と思いつつ。ちっとも双方向的でないこの感情は愛と呼べるのか否か。
5/10 粘膜が赤く痛んで貼りついてしまうわたしときみの内側
痛い痛い痛い。
5/11 くるぶしにきみの気配をしのばせて電源装置は青い太陽
ポルノグラフィティがツアーグッズで出した靴下(本人たちのシルエット的な刺繡入り)を履いてると、それだけで浮き足立つの本当にちょろいなって。
5/12 その狂気ごと愛したいなめらかな肌にくちづけ降らせてみたい
同じだけの狂気を自分も相手に抱いてるときに限る。
5/13 どろどろの愛で溺れて妄想の中でだけいい恋していたい
「中でだけでいい/恋していたい」なのか「中でだけ/いい恋していたい」なのかで意味が変わってくるから、なるべくこういうのは詠みたくないんだけど詠んでしまった。めちゃくちゃ引っかかる。
5/15 ラブソングみたいに笑うくちびるの桃色がまた情緒をこわす
結句ぬるいな~~~!!と思ってしまった。
5/15 お互いの悪意を知れば知るほどにやましいきみのやさしさに酔う
悪酔いすっぞ。
5/16 戦場のハッピーバースデー 死に向かう日々にひかりを挟んで重ねる
リアル戦場じゃなくても、人生ってずーっと争いの連続で、最終的に死ぬしかないんだけど、そのあいだあいだに嬉しいことがあるからなんとかなってるだけなんだよなって思う。
5/17 飛び越えるための翼は生えていて羽ばたくだけで筋肉痛だ
普段から運動してないから……
5/18 幸せと思わなくてはいけなくて虚ろな肺に集まる酸素
幸せと思わなきゃいけない瞬間てあるよね。(それにしたって「思わなくてはいけなくて」のもたもた感が気になる)
5/19 しあわせを重ねた先に永遠があるといいよね 宵の金星
ひらがなで「しあわせ」にするとポジティブなイメージになるのふしぎ。
5/20 不確かな繋がりを振り払うまだ溶け合うことはできないぼくら
振り払ったからって溶け合えるかはわからないのに。
5/21 自分の誕生日なので、自分の誕生日のための連作を詠みました。
5/22 知らないと笑うあなたに今一度愛とは何か尋ねてみたい
知らない、知らない、知らない!
5/23 輪郭はかなしい境界 愛してるのにきみはきみでしかないんだ
ほらね溶け合うなんて無理なんだよ。
5/25 はえかわる、はは、おとなのは 唇を緩ませながら子は繰り返す
下の子(年長)の歯が初めて抜けた。いつまでも赤ちゃんな気がしてるけどそんなことはないのだな、と実感した。
5/26 地下鉄の暗いホームに颯爽と登場 朝の阪急マルーン
ぴかぴかの阪急がやってくるの、本当に好き。
5/26 誰ひとりわたしを知らないままでいい各駅停車の地下鉄でゆく
逆に各駅停車じゃない地下鉄って大阪にはなくないか?
5/27 君はまだ言葉を知らず金曜の憂鬱を閉じ込めてる身体
上の子(小2)は口達者な女子だけど、それでもまだ嫌だったことをうまくこちらに伝えられなくて、ぶすくれた顔でわたしにだっこされていた。
5/27 やわらかく抱かれるような風が来て不在通知はそれだけだった
急にもう二度と会えない人のことを思い出す。
5/30 呼吸さえあいまいになる夜だからふたりでいてもこんなにくるしい
つらい。
5/30 雨が降る手前の風の冷たさで静かに恋を終わらせてほしい
あとはひとりで勝手に雨に濡れとくからさあ。
5/30 恋だって思い込んだら勝てるから目を見て好きと言ってみ、早く
恋してる方がだいたい楽しいから、勝ち負けで言えば勝ち。
5/31 それはラブソングだったねやわらかいひだまりのなかゆるむはなうた
鼻歌がラブソングだったのかもしれないし、優しいラブソングみたいな鼻歌だったのかもしれないね。