#一日一短歌 2023年5月分
だんだん仕事に行くのが嫌になってまいりました……と毎日日記に書き始めた2023年5月でした。おそろしい。
5/8 膝を抱く さみしい色で爪を塗る 間違うためのルーティンになる
さみしい色、何色かな。薄紫とか灰色かな。でも似合う人には似合う色やしな。
5/8 断末魔 潰れた心の裏側にいつか見せたい桃色がある
心が何色なのかも議論の余地あるよね。
5/8 ありえない夢ばかり見て現実になるのがこわいくせに焦がれる
現実になったら怖い夢もある。ある?
5/9 後悔を抉り出すような朝だった春というにはまぶしすぎてる
春はまぶしいものですが、そういう朝だったのかも。
5/9 つい安い哀しみを背負わせてしまうことばはとげとげだらけの毛布
ツイッターでなんか見たんだと思う。ことばは不意に思わぬ方向へ飛んでいくこともあるから怖い。
5/10 いつまでも交わりたがって夏になる手前の春の朝は冷たい
肌寒い朝だったんだろうな。
5/10 永遠を空に願えば願うほど瞬く星に笑われている
星の寿命は一瞬なのにね。
5/10 夜がくるのがこわかった泣き声がわたしを責める責める責める夜
娘はなかなか寝つけない乳幼児で、お昼寝明けの夕方と眠れない深夜が本当に嫌だった。今ならもっと気楽にやれるんだろうなあ。
5/11 あの日から刺さって抜けない棘だった涙の代わりに愛をこぼして
血みたいにこぼしてやる、これみよがしに。
5/11 好きだって言えないままで書きためた手紙の熱で今夜も飛べる
夜中に手紙を書くのはほんとにやめた方がいいのに、いつも短歌という手紙を書いている。
5/12 美しく終わりたかった春の日に割れた百合根は涙の形
百合根美味しい。自分で料理したことはないけど。
5/14 冷めかけたスープを黙って飲んでいる愛はときどき傲慢になる
あっため直してほしかったら「あっため直してください」って言いなさい。
5/15 きみだけのものになりたい閉じ込めて閉じ込められて透明の檻
そんなん無理なのに、ってことを願ってしまいがち、恋。
5/15 くちびるがすり切れそうだ横顔に「好き」と伝えるまでの震えで
震えすぎィ!!!!
5/15 落ちるものだったと知って空がもうこんなに遠い恋のはじまり
恋はやっぱり落ちるものだと思うわけです。
5/16 近くても声が聴けても星は星きみの住処は美しい空
まだ3月3日(ギタジャンの日)から戻れてないですね……
5/17 まぶしくて好きだと思うきみになら両目を潰されてもいいくらい
比喩です。
5/18 手元にはかけらひとつも残らないくらい奪われ続けていたい
自分のことよくない恋愛をするタイプだという自負があるので、身を滅ぼす前に夫に出会えてよかったと思ってる。
5/18 甘すぎるゼリーに閉じ込められた桃 理解されなくてかわいそうだね
もしかしたら野菜と一緒に焼かれたいタイプの桃だったかもしれないのに。
5/19 この世にはどうあがいても燃やせない心もあって生き埋めにする
だから「心を燃やせ!!」って言われてもピンとこない人もいるんだろうな。
5/19 晴れすぎた春が終わって移り気な紫陽花が咲く夏が始まる
たぶんこの日シーズン初の紫陽花を見かけたんだろう。
5/20 19日に高橋優のライブ「ReLOVE & RePEACE & ReUNION」京都公演に行ったので、短歌の連作を詠みました。
5/23 ぽろぽろとピアノを鳴らす白黒は混ざり合っても美しいもの
ピアノくらい弾ける人間でありたかった。
5/23 美しいと思わなきゃやってらんねえよすべてのものに終わりがあること
きったねえ終わり方もあるけどね。
5/23 なんだっていいんだきみの人生に食い込めるならヴィランにもなる
このころてにをはの『ヴィラン』が好きでなんとかうまく使いたかったんだけどだめだった。
5/25 ほぐされたからだですべてのみこんでわたしのなかの海があふれる
自分の内側を海などと言ってしまうのは不遜ですらありますが。
5/30 何もかも打ち捨てたくて異世界に行きたい朝のならしかトレイン
異世界に行けそうなほどの気合入ったラッピング列車だよね、ならしかトレイン。
5/31 おりづるは飛べないけれどその羽に祈りを乗せて連なっていく
祈らずにいられるものか青空に新緑しずかに揺れる公園
戦争の反対が平和だなんて悲しいことを言わんでよ、鳩
あの街の平和の色は赤 絶えず祈りつづけるともしびがある
ポルノグラフィティの新曲『アビが鳴く』がリリースされた日。広島県との公式なコラボ企画のひとつとしてタイアップされるというあまりに重い曲でありながら、それがなくとも名曲としてじゅうぶんに聴ける大好きな曲。
5月は誕生月であるにもかかわらず全然ハッピーな気持ちでいられなかったのがつらすぎた。それでもちゃんと31首以上詠めてたのでよかったです……