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亀仙人おばあさん

夕暮れ時、信号待ちをしていたら、両手で杖をついたおばあさんが横断歩道を渡っていた。
車道の信号は青になっているので、おばあさんの渡る歩行者用の信号は赤になっていた。
おばあさんの歩くスピードがゆっくりなので、おばあさんが渡り切る前に歩行者用の信号が赤になってしまったのだ。

わたしが見ていた限り、おばあさんが道路の真ん中に来た時点で歩行者用信号は赤になっていた。
歩行者用の青が30秒だとして、おばあさんは1分かけて横断歩道を渡ったことになる。
まるで亀のようにゆっくり歩んでいるように見えた。
もちろん車はおばあさんが渡りきるまで、1分待ち続けた。

わたしはおばあさんの身を案じた。
赤になっても横断歩道を渡りきれない状態で、一人で交通量の多い道を歩いていることに不安を覚えた。
誰か近くに「危ないから一緒に行こうね」「必要なもの買ってくるね」と言ってくれる人がいるのか。

わたしは今まで以上に周りに気をつけて運転しなければならない、とおばあさんに教えられた。

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