高級ブドウ「ルビーロマン」の今後
石川県が14年もかけて開発した高級ブドウ「ルビーロマン」は、
・巨峰の2倍もの粒の大きさ
・目を惹く赤色
が特徴で、「夢のブドウ」と言われていますが、
「ルビーロマン」の名前について、困ったことが起きています。
この名前を現在、誰でも使える状態となっています。
なぜなら、商標登録されていないからです。
しかし、2007年に種苗法の品種登録はされており、育成者権は2037年まで存続します。
「品種登録されているから大丈夫じゃないの?」と思われるでしょうが、これは苗や品種を育成、販売などできる権利であり、「ルビーロマン」という名前を独占する権利ではありません。
もちろん、ルビーロマンの品種を第三者が育成したり販売したら、育成者権の侵害ですが、「ルビーロマン」の名前を使うことまでは抑える権利ではありません。
なぜ「ルビーロマン」(ブドウ)は商標登録されていないのでしょうか?
商標法では、品種登録された名称は、その苗や類似商品について、商標登録できないことが規定されています。
これは本人であっても商標登録できません。
商標法4条1項14号
種苗法の品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするものは、商標登録できない。
この条文があるために、品種登録された品種の名称は商標登録できません。
なぜこのような条文があるかというと、
開発者以外の者が品種の名称を商標登録すると、その人が品種の名称を独占し、皆がその名称を使えなくなるからです。
しかし、品種の名称を皆が使えるようにしたがために、却って困ったことが起きています。
実際に、ルビーロマンの苗が韓国に流出したという事件も過去にあり、困ったことになっています(韓国はまたその国独自の法律が適用され、商標登録も別なので、そちらで対処します)。⇤この点は後日お話しします。
どうすればよかったのでしょうか?
上述したように、品種登録された品種の名称は本人であっても、商標登録できません。
前回紹介した福岡県の「あまおう」は、品種の名称は「福岡S6号」であり、「あまおう」とは名前が異なります。
しかも「あまおう」の商標登録は、「全国農業協同組合連合会」の名義でされています。
「ルビーロマン」についても、
・「ルビーロマン」とは違う正式な品種名称をつくり、これで品種登録する
・正式な生産者、取引者に商標の使用許諾をできる、農業組合のような団体名義で、「ルビーロマン」を商標登録する
という方法があったと思います。
しかし、「ルビーロマン」が「ぶどう」について商標登録されていない以上、今後のことを考える必要があります。
「ルビーロマン」は著名であるため、もし第三者がこの名前を使用したら、不正競争防止法により「不正競争」と主張する、という方法が考えられます。
商標登録されていなくても、周知な名称である以上、「不正競争」と主張することはできます。