何でもないけど、なぜか忘れられない日。
だだっ昼間から、干したところのシーツの上で、本を読み耽った。
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あの昼を、思い出した。
あの昼は、ちょうど1年前だったと思う。
このくらいの暖かい季節に、家じゃない場所でひとりだったあの昼。
こんなにも鮮明に覚えているのかと思うくらいの1日はきっと、誰にだってある。
それがたまたま、私は、あの初夏の昼なのだ。
ずっと誰かと一緒にいた毎日のうちに、突如訪れた孤独な時間。
体がむずむずして、シャワーを浴びた。
いつもはみんなと早くお話したくて、焦りながら浴びるシャワーも、その日は鼻歌すら歌いながら浴びた。
脱衣所もないような狭いお部屋だったから、ほぼ濡れてる状態で服を着なきゃいけなかった。そんなお部屋に、キャミソール1枚で出てやった。
みんながいて、話が盛り上がってて、ほんとに「狭い狭い」と文句を垂れながら過ごしていた一つの部屋が、今、こんなにも白い。そして広い。
ごちゃごちゃしてたみんなが、いない。
広い。
そして白い。
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無意識のうちに、昨日の夜にUberで食べたたこ焼きと、缶ビールはまとめて片付けた。服をとにかく脱ぎ散らかす友人たちの癖に慣れ、自然と手はハンガーに伸びる。確か今日は朝からバイトって言ってたっけ。昨日夜に着ていた可愛らしい色のTシャツがある代わりに、白いシャツがない。
ああ、起きる必要ないって言われてたけどガサガサで一緒に起きて見送ったんだっけ。
ぼけっとしながら記憶を辿る。
電気もつけていないのに、眩しい。
そんな昼には、月が出ていた。
忘れもしない、綺麗な半月だった。
そんな半月の真下で、猫のように伸びをした、あの昼。
夜中の3時とかに書いてて怖い。
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この昼が一体なんだって話だけど。
そんな昼を、私は『満月珈琲店』という本を読みながら思い出したんだ。
朝早く起きて、布団のシーツを干した。
最近ご飯を食べないから、軽くバナナだけを食べて、製図作業をしていた。
お昼すぎ、ちょうど12時半を回った頃にシーツを取り入れて、太陽を浴びて暖かくなって、おひさまの匂いがするシーツに寝転がった。
そして、まるで文字に星降るような物語を読んだ。
満月の夜にだけオープンする、珈琲店。
その物語に出てきた場所は、紛れもなく、あの日あの昼にいた場所だった。
大きな川が近くにあって
程よく栄えた街。
なんということだ。
あまりに鮮明になる記憶に少しクラクラして、窓の外に目をやる。
なんということだ。。
綺麗な半月が薄らと出ているではないか。
もう、なんだか気持ち良くなってしまって、本をもったそのまま、
ぐっすり寝てしまった。