地域に暮らす「たった1人の課題を想像&創造できる」〜ペルソナカード〜
高校生にとって地域の困りごとを見つけるのは難しいのかもしれない。
そう感じたのは2018年のことでした。
茨城県鉾田市にある県立鉾田第二高等学校の「まちづくりコンテスト」を市の事業で推進した時に、地域課題を想像したことすらない高校生たちに、大人が勝手に期待をするプロジェクトに限界があるのではと感じたのを覚えています。
日本で生活をしていると、路上に物乞いをしている人を見かけたり、保険がないから病院にすら行けずに亡くなってしまうような人が身近にいるといった話を聞く機会はほとんどありません。さらに、一般的な高校生たちの生活範囲は自宅→学校→塾やバイトのように限られているので、多様な人と会うこともなく日々を過ごしています。
そんな高校生たちに地域課題を発見して課題を解決するアイデアを考えよう!というのは、さすがに無理がありますし、まずは困っている人を想像できるようになることが最初の一歩目なのでは?と数年間モヤモヤしていました。
実際にいくつかの学校に関わる中で総合的な探究の時間で高校生たちが作成した企画案を見てみると、「誰のどんな課題を解決するのか」というストーリーはほとんどなく、環境問題のような大きな課題を取り上げ、デスクトップ調査で調べたことと自分たちに出来そうなアイデアを考えて、発表している内容がほとんどです。
先生方も地域課題解決のプロではありませんので、総合的な探究の時間が負担になっているケースも多く、先生、生徒の双方にとって、もったいない状態が起きていました。
そこで、僕たちは昨年から開発してきた「たった1人の課題を想像&創造できる〜ペルソナカード〜」を高校の先生方が授業で活用できるような設計にして、今年度からいくつかの学校で取り組みを始めました。
結果はというと、自分たちでも驚くような成果が出てきていて、可能性を感じまくっているのでシェアしたいと思います。
実際に茨城県立鉾田第一高等学校と茨城県立鹿島高校で合計700名以上の生徒に対してペルソナカードを活用して、地域で暮らすたった1人をイメージするワークを実施しました。
ペルソナカードは3種類のカードがあります。
①地域で暮らす人
②生活のシーン
③感情
ゲームに必要な時間は高校の授業時間50分~55分で、授業内に完結する内容になっています。
実際に地域で暮らす人をイメージするワークをしているときに抜けがちなのは対象となっている人の「感情」なんです。
例えば、①地域で暮らす人カードと②生活のシーンカードを合わせて
<膝が悪い70歳の男性が病院に行く>
というストーリーが出来た場合、表面的に見てしまうとおじいちゃん病院に行くの大変そうだから自動運転を使って家の前まで病院のバスが来てくれたら良いのでは?となるケースが多い。
しかし、ここに③感情カードが入ることでおじいちゃんにアプローチする内容が変わってきます。
例えば、【悔しい】というカードが入ることで
<膝が悪い70歳の男性がいつも家族に病院への送り迎えの負担をかけていて、悔しいと感じている。>
のように本人がどのようになりたいのかをイメージできます。
そうなると、自動運転のバスを家の前に送迎するという機能的かつコストがかかる企画ではなく、日常生活を自分で可能な限りこなせるように身体機能を鍛えたり、共通の趣味を持つ仲間が作れるように地域コミュニティに接続して、毎日の生活に張りがでるような支援をするという現実的な企画になってきます。
まさに、このプロセスが本当に意味での探究だと感じており、課題解決の手段としてMITAppInventorなどのツールを用いていくのが今年度の総合的な探究の時間で実施していく内容になります。
実際にワークに取り組んでくれた生徒たちの感想を見ていても、サービスの奥行きが伝わっていて手応えを感じていますので、教員や一般の方向けのペルソナカード要請講座も着々と準備していこうかなと気合を入れています。
カードを入れる箱も完成間近!!
リリースまでもう少々お待ちください!