スペイン巡礼で見えるもの〜その3
サンティアゴ巡礼路を走るというのはある意味異端児のすることであるのかもしれません。
歩くよりも少しだけ早く、自転車よりも少し遅い。どっちつかずの立場が私のバギー。
コウモリの寓話があったのを思い出します。
コウモリは鳥か動物か?
それで、どちらにも属さないと自分で主張して仲間を作れずに終わるというお話。
あのお話のコウモリは多分孤独好きの寂しがり屋、AB型なのかもしれません。
荷物を背負わないという選択をしたら、きっとバギーのような押して移動する方法か、リヤカーや人力車のように引っ張って移動する方法の二種類になるはず。
そんなに多くの人が好んで取り組むものでもないのだと思います。
バックパックよりも多くのものを運べるとはいえ、やはり坂道では誰よりも遅くなることは目に見えています。
なぜあの人はあんな大きくて重そうなものを押しているんだろう?
そんな疑問を持って私を見つめる人たちは少なくはありません。
重いバックパックを背負って走ることはできません。10キロまでなら可能でしょう。
それ以上の重さのものを背負って走るのは必ず体にダメージを及ぼすというのは目に見えています。
私は単に走って旅をしたいだけ。そして、重い荷物は背負いたくないという思いがあります。
出逢う人出逢う人にいちいちこの話をしていますが、走らない人にはイマイチピンと来ないのが現実。
山を歩く人やトレイルランナーならまだ理解できる余地もあることでしょう。
ランナーである以上、走りたい。そんな純粋な思いがバギーという荷物運搬手段を生み出したということです。
サンティアゴ巡礼路でお子さんを載せたバギーを押して歩く家族に何人か出逢いました。
こちらでは6ユーロで、アルベルゲからアルベルゲまで荷物を搬送してくれるサービスがあります。重さや大きさは関係ないようですがほとんどの方はバックパックを搬送されています。
軽くて小さめのバックパックだけで移動できるのがメリット。
遠足レベルの旅ならそれで事足ります。
かつて砂漠や平原の旅を経験したアドヴェンチャー・ランナーは、それでは満足できません。カフェもレストランも利用せず、公園のベンチや草原のど真ん中で休むこともあります。常に必要なものは携行するという鉄則に従って旅をするのがアドヴェンチャー・ランナー流。
サンティアゴ巡礼路はある意味整備されたトレイルの旅。ほぼ10キロごとに水や食料も補給できるし、困ることはありません。
ただ、サンティアゴ巡礼路を経験した旅人が、この先、もっとハイレベルな旅を望むなら、やはりバギーやリヤカーなどを使うということもあり得るのでしょう。
そんなマニアックな旅人が誕生してくれることを密かに祈っています。
*アドヴェンチャー・ランナー高繁勝彦のメルマガ「週刊PEACE RUN(第637号)」から転載