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サンティアゴ巡礼路の旅が始まる

8年ぶりにPEACE RUN世界五大陸4万キロランニングの旅を再開させた。前回2016年の旅の続きでもある。今回はサンティアゴ巡礼路を含むイベリア半島をまわる旅。

6月6日、関西国際空港から羽田・パリ経由でフランス、ビアリッツ空港に7日の夜に着いた。だが、初っ端からトラブル発生。ロストバゲッジだ。旅のパートナー、私のバギーVIENTO号がパリに置き去りにされたまま身動きが取れなくなってしまった。

空港スタッフからはオンラインでエールフランスに申請してくれと軽く言われた。あいにく泊まる宿も決めていない。手元にあるバックパックと70リットルのダッフルバッグは合わせて20キロ以上の重さがある。

空港の売店も閉まっていて、水と食料も手元にはほとんどない。まずは水と食料を調達。歩いてアングレットという街にあるスーパーへ。荷物が肩に食い込む。背中と腰に相当のダメージ。十字架を背負ってゴルゴダの丘に登るのはこれに近いものがあったのではなかろうか?

こちらの物価の高さは円安の今の状況をひしひしと教えてくれる。とはいえ、食べるものはケチるわけにはいかない。どんなものがいくらするか大体の値段をチェックしておく。外食しなければそこそこ食費は抑えられる。どこを旅しようと、いつも食べるものは大差ない。缶詰やクラッカー、ナッツとドライフルーツ、バナナなどあればあとは水だけでも何とかなる。

砂漠や平原の旅を一度経験したら、どんなところでも生きていけるはず。アメリカモハヴェ砂漠やオーストリアのナラボー平原を走ってきたおかげで、あらゆる状況下で生き抜くための知恵を身につけられた。

その日は、買い物をしたスーパーのすぐそばに公園があったのでテントを張ることにした。

翌日8日は再び空港でロストバゲッジ待ち。10時台と2時台の便にはなかった。待ってても仕方ないので、その後、ビアリッツ市内のホステルに向かう。もしバギーが見つかったらメールが来ることになっている。

9日朝、メールが届き、バギーが夜の便で空港に着いたという。エールフランスはたびたびロストバゲッジがあると聞く。パリで乗り継ぎされる方は要注意。あとから申請すれば補償もある。とはいえ、必要な時に必要なものがないというのは大いに困りもの。

喜び勇んで空港へ。受付カウンターにバギーはあった。輪行袋がところどころ破れていたがバギーそのものは無事だった。組み立てセッティングを済ませ9時20分サンジャンピエドポーに向かって走り出す。

初日53キロ。アップダウンも適度にあれば雨も降ったり止んだり。ほとんど誰とも言葉を交わさない。途中に町はいくつかあるが日曜でほとんど閉まってる。ベーカリーがたまに空いていてバゲットを買った。

ラスト10キロで水がなくなった。暑くなかったのが幸い。水と食料の補給は旅人にとっては重要な課題。常に備蓄(ストック)は必要だ。

バギーが届かない場合を考えていたので、サンジャンピエドポーで宿を取っていて3連泊する。初日の走りは結構タフでハードだっただけにいい休養になる。

街を散策し、巡礼事務所で巡礼手帳(クレデンシャル:2ユーロ)とサンティアゴ巡礼路のシンボルのホタテ貝(ドネーションで5ユーロ)を手に入れた(上の写真)。

巡礼の旅で有名なものは日本の四国のお遍路や熊野古道がある。いずれも歩くことが信仰につながっている。

決して楽な旅ではない。険しい山道を歩くことも余儀なくされるし、雨や嵐などもあるため穏やかな天候ばかりとは限らない。いろんなトラブルやハプニングもあり得るだろう。

それでも、さまざまな苦難や試練を乗り越えて最終の目的地に辿り着く。旅の過程で得られた出逢いや発見、気づきや学びが自分自身のその後の人生に大いにプラスになるはず。

今朝、アメリカから来た若い男性と話をしてて、僕はこんなことを彼に言った。

サンティアゴ巡礼路はある意味プチ冒険みたいなもの。水や食料、最低限の荷物を持って約800キロを移動する。山あり谷あり。自分自身の人生を凝縮したような日々を送る。いろんな出逢いがあり別れがある。さまざまな言葉を交わし、さまざまなことを考えるだろう。

歩くことに意味があるかどうかなんてわからない。それでも、歩くことに意味を求めること自体がどうでもいいということにその後気づくかもしれない。

大切なのは、頭を空っぽにして、無我夢中で歩くこと。そうすることが、当たり前だった日常をじっくりと見つめ直すことができる時間だ。

文明に恵まれた楽な生活が決して楽しいものばかりではない。お金を出しても買えないものが世の中にはあるし、サンティアゴ巡礼路を歩くのはまさにそんな経験ができる格好の機会だろう。多少苦難や試練があることがむしろ人生のスパイス的なものになり得るということだ。

今まで走ってきた僕の「PEACE RUN世界五大陸4万キロランニングの旅」も結局のところ、その根本にあるのはサンティアゴ巡礼路と同じなのかもしれない。

明日朝、バギーを押してサンジャンピエドポーを出発する。初っ端からピレネー山脈越えが待っている。

どんなに険しい道であっても、道がある限り人は前に進んでいける。前に進もうとする意志があればこそ道は自ずと開けていく。どんな生き方でもいい、どんな旅であってもいい、それが自分の人生と旅であるということを誇りに思えたら最高だ。

ビアリッツから43キロ走ってサンジャンピエドポーまで残り10キロほどの地点



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