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スペイン巡礼で見えるもの〜その5

*歩くことについて

いうまでもなく、巡礼路は歩く人たちがメイン。

最近では自転車も増えているし、どんなに坂がきついところでもeバイク(スポーツタイプの電動アシスト自転車)で走るシニアの方々も結構おられます。

基本は荷物を背負って歩くということになりますが、ほとんどの方はバックパック。

重いものを背負いたくない人は、荷物の搬送サービスが6ユーロ(約1200円)で次の宿まで運んでもらうこともできます。最小限の荷物だけ小さめのバックパックで背負って歩かれる方はかなりいるようです。

全行程を歩くのにやはり自分の荷物は自分で背負うというのがやはり大切なのではないかとも思います。私はもちろん最小限ではなく結構いろいろバギーに積んでおりますが。

バックパックは大体30〜40リットルが多いようです。すべてアルベルゲ(巡礼者の宿泊施設)に泊まることを前提で、寝袋と最小限の衣類、洗面用具、水筒が必需品になるでしょうか。ポール(ストック)もあればいいでしょう。

シューズはハイカットのトレッキングシューズの方もおられますし、トレイルランニング用のローカットシューズも少なくはありません。道のいいところだとスポーツサンダルで歩く方も良く見かけます。

一番の問題は荷物を背負って歩くとマメができるというところ。そのため、ソックスもメリのウールを使った通気性とクッションのある厚めのものが理想。宿でテーピングをされる方も多いですし、歩く前にワセリンを塗るのも必要かと。

近頃は、海外でもサロンパスのような絆創膏タイプの消炎鎮痛剤もあるようですし、クリームタイプのものも手に入るようです。私自身はマメもできないので使ったことはありません。

町ではマッサージをしてくれるサービスもあります。私は持参した青竹踏みをするだけです。

最初の数日でマメがある程度できたら足の皮膚も固まるのでそこそこ耐久性もできるでしょうか。いずれにしても、マメはシューズ内の湿気と摩擦が原因。時々シューズとソックスを脱いで風に当てるのもいいと思います。

インソールにこだわる人もいるようですが、私はまったくこだわっていません。アルトラのローンピークでずっと1300キロ近く走ってきて、そろそろシューズの交換時期です。

荷物を背負うことでショルダーベルトや背中がただれる方もおられることでしょう。

ベルトの当たる部分にスポンジパッドを当てるなどの工夫をされる方もいます。

荷物のパッキングの仕方で重く感じたりすることもあります。これもグーグルで「バックパック 荷物 パッキング」を検索してみてください。

季節によって持ち物も変わる訳ですが、特に寒い時期はフリースや軽量のダウンジャケットなどもいる場合もあります。下着は最小限持参で、毎日(手洗いがほとんど)洗濯して干すというのがルーティーンになるでしょう。日照時間が長く(夏だと午後10時頃まで明るい)、夕方洗っても火が沈む頃には乾いてしまうのです。

持ち物は歩くスピードに大きく影響を及ぼします。軽ければフットワークも軽く、歩くスピードも速くなります。余計なものを持っているとそれだけで歩くペースも落ちてしまうということです。

歩く距離も人それぞれ。普通の人なら20キロは歩けるでしょうか?山がちなエリアだと距離は短くなるかもしれません。健脚の方なら頑張れば30キロ強も歩けるはず。

ただ、早い時間に歩き終えて、シャワー、洗濯、くつろぎの時間をできるだけ楽しみたいもの。無理に欲張って距離を伸ばすと後々辛くなります。

フランス人の道約800キロですので、20キロ平均で行くと40日、プラスオフ日を1週間に1日入れるとして5〜6日。普通の方なら1ヶ月半。健脚の方で30キロ平均なら1ヶ月ちょっとは必要でしょう。あくまで概算ですが。

歩く辛さで途中でギブアップする人ももちろんいる訳ですが、体は毎日歩いていると耐久性もついてきます。頑張れば距離を伸ばすことも可能でしょう。その辺は体との対話が必要になってきます。

ランナーでフルマラソンの経験がある方なら1日30キロというのも難しくはないでしょう。1日の大半を歩くことに充てる訳ですが、もちろん要所要所でカフェに立ち寄ったり木陰のベンチで休んだり、無理なく旅を続けることが求められるでしょう。

同じペースで歩く他の巡礼者の方々と友達になって、おしゃべりしながら歩いていると意外にも時間の経過は早く感じられるもの。世界中のいろんな国々から来た人たちと国際交流できる絶好のチャンス。英語ができなくても、単語の羅列だけでも何とかなるもの。

度胸と愛嬌があればあとはスマイル。

同じゴールに向かってひたすら歩くという目的があればこそ、みんな同じ立場にある訳です。これは、マラソンやウルトラマラソンの世界にも通じるものがありますね。

宿泊を伴う大人の遠足(とおあし)というべきでしょうか。

自分なりの歩き方や旅のパタンも1週間、10日経てばある程度確立してくるので、少しずつ慣れていくといいですね。

宿の予約もブッキングドットコムでたいてい何とかなりました。混み合う時期は早めに宿を押さえておくのがいいのですが、あまり先々の日程まで決めてしまうとトラブルやハプニングが起きた際に困ってしまいます。

1日の終わりに、その日撮影した写真を見て振り返ってみたり、SNSで記録を残しておいたり、デジタル時代の今はいろんなことができますからね。

地図はなくても、必ず黄色い矢印がそこら中にあるので迷うことはないでしょう。ブエンカミーノというアプリを入れておくとあれこれ役立ちます。自転車ルートは少し違う道を辿るので注意が必要です。

朝、暗い時間帯からアルベルゲを出て歩き始める方も多くみられます。距離を長く歩きたいのであれば早出も必要です。

夏場、午後は日差しも強く、暑くなるので、午前中に距離を稼ぐことも必要になるでしょう。水分補給と暑さ対策も夏は大切。空白区間がある程度長くなるところでは水や食料もある程度携行しておくことをお勧めします。

いろんな方がサンティアゴ巡礼路の装備や歩き方、旅の仕方について書かれています。みなさん、それぞれに自分流があって、私がここに書いていることも全ての人に当てはまる訳ではありません。

事前に、バックパックに装備を詰めて一定の距離を歩くトレーニングもやっておくといいですね。

フランス人の道ではかなり急勾配の登り下りもあります。日本で山歩きをされている方ならいざ知らず、山の経験がない方は驚かれるかもしれません。ただ、時間をかければどんな坂道も登れるもの。

江戸時代の人たち(それもごく普通の方々)が1日10里(約40キロ)を毎日歩いて旅したと言われます。あえて、今の時代に歩いて旅をすることで何が得られるでしょうか?答えは歩いて見つけてください。

*アドヴェンチャー・ランナー高繁勝彦のメルマガ「週刊PEACE RUN(第639号)」より転載

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高繁勝彦(アドヴェンチャー・ランナー)
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