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人生のスピード

イーグルスの歴史的名盤「ホテル・カリフォルニア」のアルバムに「駆け足の人生」という曲がある。

原題は"Life In The Fast Lane"で、直訳するならば「追い越し車線の人生」ということか…。

自動車を運転される方ならお分かりだろうが、追い越し車線は、ちんたら走っている車を追い越すためにある車線。

分かりやすく言うならば、一分一秒たりとも無駄にできない急いでいるドライバーのための車線。

時間に追われている…急がなくてはノルマがこなせない…次にやることがあるから…といろんな理由で人は追い越し車線を走る。

みんなに平等に与えられているはずの24時間ではあるけれど、メンタル的には1日24時間では足りない方々が、どうやら今の時代多々いるようだ。

その昔、「せまい日本そんなに急いでどこに行く」という交通標語があった。

調べてみてわかったのだが、昭和48年(1973年)の全国交通安全運動の標語募集で総理大臣賞を受けた秀作だとのこと。作者は高知県の岡本さんという警察官だったらしい。50代以上の方々には記憶に残っているのではないだろうか?

大阪万博があったのは昭和45年(1970年)、それ以降日本はマイカー時代に突入。1970年代に入ってから交通死亡事故は急増。少しでも悲しい事故がなくなるようにという願いを込めて作られた標語なのだろう。

この標語の作者岡本さんの故郷の町にある道の駅梼原には「せまい日本そんなに急いでどこへ行く」の石碑があるそうだ。

大陸ではなく狭い島国に住んでいるから…ついつい急いでしまうのかもしれない。追い越し車線を走る走らないは個々の自由ではあるのだけれど、追い越すよりも他のドライバーに道を譲るくらいの心のゆとりはあってもいい。

今、こうやってインターネットを使っているのだが、かつては光回線ではなくダイヤルアップだった。

メールも送信してすぐに返信が来ないと苛立つ人もいる。今では、メールではスローすぎるというので「チャット」というものもごく普通に使われるようになった。

便箋にペンで文字を書いて、封筒に入れて封を閉じ、切手を貼ってポストに投函する…英語ではこういうものをsnail mail(カタツムリのメール:郵便)というらしい。

ひとたびスピードに慣らされてしまった人間はスロースピードには満足できず、少しでも通信速度が遅いとイライラする羽目に…。

あせらずあわてずあきらめず…

心を亡くすと書いて「忙」しいと読む。
何かで忙しくしている時には、自分のことでさえ気が回らなくなる。
焦りがある時も同じ。急いては事を仕損じると言われる所以(ゆえん)。

心を落ち着けて深呼吸する時間…目を閉じて内なる自分の声に耳を傾ける。

ゆったりまったり生きよう。

生きることに関して、急いだり慌てたりする必要はまったくないのだから…。

ゆったりまったり流れる時間は、ゆとりある心のなかでこそつくりだされるもの。

車の運転やインターネットの通信速度だけではなく、生きるスピードについても、じっくり考えてみたいところだ。

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高繁勝彦(アドヴェンチャー・ランナー)
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