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2016年の西ヨーロッパランニングの旅では大小様々なトレイルを辿る機会に恵まれた。

舗装された道路は主に自動車が走る道。徒歩旅行者はトレイルなど細くて狭い道を辿るのが普通だ。

イギリスでは運河沿いの遊歩道が多かった。自転車も通る道になっているのだけれど舗装されたところは少なかった。

車止めがある度に幅のあるバギーは立ち止まらざるを得ない。

バギーから荷物を下ろし、荷物だけまず車止めの向こうに運び、次はバギーを折り畳んで運ぶ。車止めの向こうでバギーを組み立て、荷物を再度積み直して走り出す…この繰り返しだ。

ドイツやオランダなら自転車専用道が至る所に整備されていてどこに行くにも困らない。

各ルートに番号がついているので、行きたい場所に行くのにどの道を辿っていけばいいのかも実にわかりやすい。

フランスでは一旦郊外に出ると古い街道のような道に入ってしまって、結構道に迷うことが多かった。

Googleマップでルート検索をしてはいたものの、指示された道がなかったり、途中で行き止まりになったりすることもしばしば。

バギーを押しているのにいきなりフェンスで道が寸断されるようなケースが一度あった。Googleマップは私道も通るように指示してくるからだ。

後戻りするにすても相当面倒だったこともあり、フェンスを越えることになるのだが、それもまた大変。

イギリスで何度も経験したように、バギーの中の荷物を一旦バギーから出してフェンスの向こうに運び、最後にバギーも車輪を外し、折り畳んでから同じようにフェンスの向こう側に運び出して、再度荷物をパッキングして走り出すというようなことをやっていた。


静かな森の小径では人とすれ違うことも少ない。それゆえに、車の多い幹線道路を走るよりははるかに気持ちがいい。倒木の上に腰を下ろしてスナックタイムを楽しむのもまた素敵な時間だ。木々の香りやしっとりした空気感も僕には心地よいものだった。

何度かトレイル脇の小さなスペースを見つけてでキャンプしたこともあったが、海よりも山が好きな僕には、トレイルで過ごす夜の方が安心できるのだった。

風が木々の葉を揺らす音も、フクロウの奇妙な鳴き声も、旅のさなかのBGMと思えば心地よい子守唄にもなり得る。


アメリカやオーストラリアでももちろんトレイルを走る機会もあったけれど、大陸というイメージが強く、今振り返ってみてもだだっ広い砂漠や平原を走っている場面が自然と思い起こされる。

旅先でどれだけ一人の夜を過ごしたかわからないけれど、自然災害に見舞われるようなシーンは別として、恐怖や不安を感じることはほとんどない。

国内にとどまり続けている今も、僕はそういった深い森の中の小径を走っている夢をよく見る。

夢の中でいつも僕はただ森の中をさまよっている。

一見、現実の旅と同じように見えるけれど、目的が違う。

どこかにたどり着くためではない。

永遠にどこにもたどり着くことのないように…

ひたすら走り続けるのだ。

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〜アドヴェンチャー・ランナー高繁勝彦のメルマガ「週刊PEACE RUN」(第480号)♪ シリーズ「PEACE RUN~人・町・風景・できごと」から〜


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