スペイン巡礼で見えるもの〜その4
*アルベルゲについて
サンティアゴ巡礼路で宿泊するとなると、まずはアルベルゲであろう。
巡礼者のための宿泊施設で、公営のものと民営のものがある。基本はドミトリーで男女混合。シャワーやトイレも共同。
公営のものは一泊当たりの料金が安い(10〜15ユーロ、場合によってはドネーション)、が予約ができないので先着順。私が泊まったところは大部屋が多く、修道院の施設をそのまま使っているところもあったりする。
民営のものは20ユーロ程度だが、個室のシングルルームがあるところもある。
ブッキングドットコムで前もって予約するが、週末や夏のハイシーズンは予約が取れないことも多い。飛び込みで現地に行ってから宿を決めるパタンもあり。
ドミトリーというものを知らない方々も多いかもしれないのでざっと説明すると、昭和の時代にはたくさんあった日本のユースホステルがよく似ている。
チェックインをしたら、まずはベッドをあてがわれる。最近はほとんどのところが不織布のシーツと枕カバーを自分でセットしなくてはならない。昔に比べてベッドバグ(南京虫とかダニ・シラミ)はほとんどいないようだ。
土のついたシューズはドミトリーに入れないところがほとんど。場合によってはバックパックも別室に置くこともある。施設内の移動にサンダルは必携品。
食事を提供してくれるところもある。私がリゴンデで泊まったアルベルゲはコミュニティディナーをいうことで全員一斉にスタッフと食事を摂った。ワインが振る舞われたり、デザートにコーヒーやお茶までついてくるありがたさ。
共同キッチンがあれば、スーパーマーケットで買い物して、自炊も可能。有料でディナーがとれるところは15ユーロほどする。朝食は6ユーロほど。
冷蔵庫や電子レンジ、湯沸かしポットもあるし、コンロやトースターなども用意されていると一通りの料理は作れる。
短期間の旅なら外食でもいいが、長旅をするなら食事で節約することも必要だ。
バックパックで移動する巡礼者たちは最小限の水と食料しか運べないので、アルベルゲで食べる夕食と朝食はスーパーで買って滞在中にすべて消費するというのがお決まり。
他の巡礼者たちとコミュニケーションが取れる絶好の場所がキッチンとダイニングルームだ。他の国から来た人々の料理のレシピを学ぶことも可能だからありがたい。
スペインはワインやビールは安い。ビールはコーラより安いのが驚き。
アルベルゲに着いたらまずシャワー、そして洗濯。たいていみんな手洗いで済まして外干し。日照時間が夜10時頃まで続くのでたいていのものはその日のうちに乾いてしまう。
干したものが風で飛んで行かないようにピンチ(洗濯バサミ)で留めること。今回私は、洗って干したものの回収ができず、ハーフパンツを置き忘れてしまった。洗って干す際に何を何枚干したかチェックしておくといい。
ベッドにはコンセントやライトがついているところもある。カーテンがあればプライバシーは守れるがないところも多い。二段ベッドの上になると昇り降りがやっかい。下のベッドだと上のベッドの板が頭に当たるケースもある。カプセルホテルタイプのベッドもパンプローナにはあった。
貴重品用のロッカーも用意されるところがある。鍵はついている場合もあるし、こういう時のために小さな南京錠は用意しておくといい。
シャワーやトイレの際には貴重品はロッカーに入れておくか、シャワーの中に持っていくことが可能ならそれもいい。ちなみにシャワーはとても狭く、着替えをドアにかけてシャワーを浴びると濡れてしまうのでポリ袋を用意するのがおすすめ。
お湯が出るのにかなり時間がかかることが多い。ボタンを押してしばらくお湯が出るが自動で止まるような節水蛇口を採用していることもある。ライトもセンサー式で、夜中トイレに行って急にライトが消えてびっくりすることもある。
何せ日本と同じように行かないことがほとんど。ウォッシュレットみたいなものはこちらにはあり得ない。いかに日本が至れり尽くせりかを知る。
夜になって、大体10時にはサイレントタイムになるものの、夜中飲んで午前さまで帰ってくる者も少なくはない。そうでなくても、大部屋に泊まると、夜中のドミトリーはいびき、寝言、おならなどの騒音は激しい。これは寝ている本人も気づかないだけに厄介である。
若い女の子の隣のベッドとか真下のベッドで寝ていて気遣うことはしばしば。
朝早くに出発する際にも、真っ暗な中でハンディライトかスマホの灯りで身支度を整えてドミトリーを後にする。忘れ物がないように隅々までチェックを怠らないように。ベッドの淵に干していたタオルを忘れたことがあるが、前夜のうちに朝の出発時のシミュレーションをしておくといい。
フリーの朝食が用意されているところもある。時間が朝7時と指定されていたりすると食べずに早出する人たちもいる。
前夜のうちに準備してくれていると助かる。パンとコーヒーだけというケースも多い。
キッチンにはフリーフードというのもあって、もう必要無くなった食べ物を他の巡礼者たちが置いて行ってくれるのだ。もらえるものはもらえばいいし、自分が不要になった食べ物は置いていけばいい。
世の中にはいろんな人がいるということを教えられるのもアルベルゲ。世界各国から来る巡礼者たちと少しでも国際交流できるように、言葉ができなくても意思疎通は可能。Google翻訳を使えばなんとでもなる。最低限の英会話ができればあとは身振り手振りというのもオッケー。若い女の子のソロツーリストも多いので若い男性諸君は積極的に声をかけてみよう。
*アドヴェンチャー・ランナー高繁勝彦のメルマガ「週刊PEACE RUN(第638号)」から転載