蚊の飛ぶ音は常識
先日、朝起きてリビングでくつろいでいたら、寝室からお嫁が降りてきた。どうやら、昨日は眠れなかったらしく不機嫌そうな顔をしている。しばらくしてお嫁が口を開いた。
「昨日全然寝られへんやったわ」
「へぇ、そうなの。どうしたん。」
「なんかなぁ、蚊おったやろ。」
「そうなの?おったっけ?」
「おったで!一晩中、
ヴゥゥゥゥゥン言うて寝られへんかったわ」
「おったかなぁ?
俺は刺されんやったけど。」
「ほんまあ?おかしいなぁ、
なんで私のとこだけくるんやろ。
一晩中やで、ヴゥゥゥゥンいうて。」
「なんでVの発音なん?」
「は?」
「なんでVの発音で蚊が飛ぶの?」
「は?意味わからへん」
「さっきからヴゥゥゥン言ってるやん。
なんでVで蚊が飛んでるの。
ぶぅーーーーんじゃないの?」
「そんな言うてた?」
「ずっと気になってたよ。」
「そんなことどうでもええねん!
こっちは眠れへんかってん!」
「パン食べる?」
「せやな。」
会話の中に「普通」とか「常識」とかって言葉をだしてしまうと、コミュニケーションの本質が削がれてしまうように最近は思っています。普通とか常識は、特定のグループの中で通用する認識なので、そのグループから出れば突然それは非常識になる。日本じゃあんまりモテない女の子が、海外でめちゃくちゃモテるとか、その土地では常識的なアイスなんだけど、実は他の地域にはないご当地アイスだったりとか。人間の認識は地域やグループに依存するところがあると思うのです。コミュニケーションって互いを理解するためのものであって、戦争をするためのものではないと思うのです。ですから、常識とか普通という言葉は、理解ではなく強要の香りがするのです。
前に、福島の友達の結婚式に呼ばれたことがある。式場の前方に地酒が飲み放題で置いてあったりして驚いてしまいました。そして一番驚いたのは、マグロの解体ショーがあったこと。
疾走感がすごい。
新婦に聞いてみると、福島では結婚式に来てくれた人々をもてなすということが常識なので、来てくれた人々を飽きさせない工夫が随所にあるのだという。それにしてもマグロがバラバラになっていく様子は生まれてはじめて見た。これを他の地域でやるとなると、参加者の方々は多いに驚くだろうと思います。
意味がわからないとか、魚くさいとか、式が台無しとか言うひともでてくるのかもしれない。それぞれの地域によって、こういう風習ってたくさんあるんだろうなぁ、と福島の結婚式では不思議な気持ちになりました。僕はすごく楽しめたからよかったです。だって、マグロが解体されるのなんて、一生に何回見られますかな?よい経験ですぞ。
普通。
常識。
当たり前。
これらのフレーズはやっぱりコミュニケーションを分断する単語だと思います。普通も常識も当たり前も、通用する範囲があります。効果のある地理的な範囲があるのです。そして、昔はそれで通用したけれど、今は通用しないという時間的な範囲もある。場所 時間 人によってほんとうに常識や普通がまったく違う。
だから、常識っていう言葉って、ものすごく狭い言葉なんじゃないだろうかと思ってしまう。わが社の常識とか、数学の公式の常識とか、他の人が口を出せないこととか、誰の目にみても明らかで変えようがない科学とか数学とかの分野とか、そういう時にのみ、常識は常識として常識化するのだと思う。だからもう、数学とか科学、化学の分野での「用語」です。
とにかくお伝えしたいのは、
蚊はVとかでもBとかでも飛ぶし、
もしかしたらPだったりCでも
飛ぶのかもしれません。
常識って言葉を使うことは、
非常識なんだな、ってことです。