川柳閑話vol.8:添削ぎらい
わたしは添削が嫌いです。自分の句をいじられるくらいなら、ばっさり「駄句!」と没にされた方がすっきりします。添削されて良い句になっても、自分の句とは思えなくなるのも嫌ですね。
添削して欲しいと言われたことはありませんが、添削をするのも才能と技術が必要です。添削をすることで、その句はより良くならなければならないですが、下手に添削をしてしまうと原句が持っていた良さも殺してしまう可能性があります。添削はあくまでも「句を活かす」技を見せなければならないですが、わたしがやると「わたしならこう作る」になってしまうんじゃないかと思っています。それは添削とは違います。
と言いながらも、他人の添削を読むのは好きです。「句を良くするテクニック」はなんぼあってもいいですからね。他人のふり見て我がふり直せ、です。
わたしが添削を受けたのは、時実新子の川柳教室だけでです。この教室は実践スタイルで、毎回2句投句し、「マル(問題なし、佳句)」であれば添削はないですが、2句ともマルということはなく、大抵1句は添削の対象となりました。
この教室に参加する前、わたしが参加するのを躊躇していた理由が「添削をされる」ということでした。自分の句がいじられるのは嫌だし、変な風に添削されて時実新子に失望するということになっても嫌でした。
が、結局「1回おいで~」と渡辺美輪さんに連れて行かれて、おそるおそる投句し、最初に添削されたのが次の句です。
(原句)あたしの中の河童が踊る春が来た 徳道かづみ
(添削)河童の中のあたしが踊る春が来た
この添削を聞いたとき「先生、疑ってごめんなさい」と土下座したものです。わたしが表現したかった春の浮かれ具合と物悲しさは、河童が踊るのではなく、あたしが河童の中で踊る必要があったのだと気付かされたのです。
この添削の時、新子先生は詳細な説明はされませんでしたが「この違いがわかれば、この教室に何年も通うより力が付きます(大意)」と仰っていました。
新子先生の添削を受けた句でも、自作として発表することは出来ました(自選欄のみ。他の方の選を受ける欄や句会はNG)。しかし、わたしは「新子先生の添削の例」でしか、この句を発表したことはありません。どんなに自分が表現したかったことが強調された句になっても、新子先生の手が入っているのだから、そのことを言って発表しないと「嘘」をついている気がするからです。その辺意地っ張りです。
添削については、作者の実力をアップするのに役立つ、いやいや何の身にもならない、と賛否はあるようです。わたしとしては、作者が「添削をして欲しい」と思って添削を受けるなら、どんどん受けた方がいいと思います。
そこで重要なのは、添削の絶対的ルールです。
つまり、作者が「この人に添削してほしい」と作品を提出し、「この人」が添削をする、という構図です。
句会やその他の機会でも「勝手に添削してくる人」という存在があります。「あの句は~~って直したら良い句になるよ」などと言ってくる人です。それを聞いた人が「良いアドバイスをもらった」と思うのなら、問題ないのですが、そうでない場合はただただ不快なだけです。「勝手に添削してくる人」に悪気がなく、本気で自分の言うことが相手のためになると思っている分、余計に厄介な存在です。
でも、まあ、わたしも歴を重ねてきて「勝手に添削してくる人」の気持ちもわからないではありません。それというのも、他の方の作品を読みながら「このワードが活かしきれてないな」とか「この言い回しはもったいない」など、鑑賞しながら頭の中で添削していることが増えたからです。単に「この句好き、嫌い」から進んだ読み方だと思えば救いですが、偉そうになったと言われれば否定できません。
他の方の句にモノ申す時にわたしが持っているルールは、次の3点です。
①双方向の意見が言える場であること(相手と議論が出来る状態)
②その句の良い点と改善した方がいいと思う点を「具体的」に述べること
③「~にしなさい」と決めつけないこと
句について議論をすることは楽しいことですし、それぞれのスキルの向上にも繋がりますので、活発にやっていきたいなと思うところです。
最後に…実は川柳ではわたしはそんなに「勝手に添削する人」に会ったことがありません。「勝手に添削する人」に「え?」となったのは、某短歌投稿サイトに参加してからです。「これはダメだよ」「こうしなさい」を評として書く方がいて、うわーわたしの作品には関わってこないでーと思っていたのですが、数回事故にあったことがあります。でも、自分の作品に言われれば反駁出来るので、そこはきちんと返させていただきました。しかしその方に言われたことは、「あえてそうやっているのだが?」とか「え?ここの意味がとれてないの?」ってことも多かったので、勝手に添削する際に「自分の読解力」のレベルも晒すことになるのだなと思ったことです。