バス・ドゥヴォス監督映画「Here」「ゴースト・トロピック」感想
今後、親しい人から好きな映画を聞かれたら、Hereを挙げると思う。それくらい好きになった。
2作とも、映像、音楽、配役、エンドロールに至るまで、美意識が一貫していて、すごいなあと。
静かで、素朴で、寂しい、ちょっとおかしみがある。
会話は少なく、大げさなリアクションや、分かりやすい対立関係もない。
でも部屋の様子や、他者との関わり方から、じんわり主人公の人生が伝わってきて、親しみを感じる。
主人公だけではなく、街全体というか、その生活全体というか、そういうぼんやり大きな枠で親しみが湧いた。私は舞台であるブリュッセルには行ったことがないのに、懐かしいとすら思った。
2作とも移民が主人公なんですよね。
移民の気持ちは知ったかぶりできないなって思うんだけど、
移民としての苦しさはシリアスな描かれ方ではなく、不安感も、親切心も、普遍的な感じで描かれていたので、自然と身近にいる人のように感じた。
(不安感:Hereで若者が漠然と将来が不安でどこへ行こうか迷うさま
親切心:ゴースト・トロピックの中年ってまじお節介、でも憎めないよね、の感じ、とか)
ブリュッセルに住んでいる人や、移民当事者が観たらまた違う感想かもしれない。聞いてみたい。
アート映画と言われているが、全然置いてけぼりにされなかった。
美しさと親しみやすさが共存していて、すごい。
大島依提亜さんデザインのポスターもかっこいい。パンフレット買ったし、チラシもいただいちゃった。
この2作を観てから、満開の桜や、夕暮れ空のグラデーションみたいなきれい景色の中にいるとき、これをバス・ドゥヴォス監督だったらどんな風に撮ってくれるんだろう、とふと考えるようになった。
どちらも渋谷のル・シネマで1か月以上前に観たのに、全然良い感想書けないなと思って、下書きになっていた。好きすぎると難しい。
渋谷ではすでに公開が終わっているが、今後、東京では吉祥寺、その他千葉や高知などでも公開が控えてるらしい。こんな感想は誰も読んでいないと思うが、余白の多いこういう静かな映画こそ、スマホを触れない劇場みたいな環境で没入して観たほうが良いのではないかと思うので、ひとりも観る人が増えたらいいなと期待して投稿します。
突然ですが、無印良品のYoutubeチャンネルは見たことありますか?
「いい暮らしって何ですか? - WHAT IS A GOOD LIFE ?」というシリーズの企業広告動画が昨年からいくつか上がっている。私はこのシリーズがけっこう好き。
高尚なようでいて、普通に身近な、この感じ。バス監督の2作を観てなんか無印良品のこの広告を思い出したんですよね。特にゴースト・トロピック。
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