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「きっかけからデザインする」ワクワクを発信し続ける建築家のお話。
芝浦工業大学 建築学科
プロジェクトデザイン研究室
上野山波粋
7月に第4回目となるプロジェクトデザインセミナーを開催しました。
プロジェクトデザインセミナーは、実際にプロジェクトを実施されている方をお呼びしてレクチャーを行ってもらうという、プロジェクトデザイン研究室独自に進める講演会です。
↑画像:講演会のチラシ (作成:プロジェクトデザイン室
私自身以前からまちづくりや公共空間というものに興味があり、勉強する中で株式会社オープンAの代表取締り役である建築家/馬場正尊さんの著書を読み、建築家だけど設計だけでなく、不動産業やメディアの発信まで行っている馬場さんの活動にとても興味を持ったことをきっかけに今回の講演会を依頼することになりました。
講演会の内容は、馬場さんが大学生の頃の雑誌Aの活動を始め、その後どのようにして働いて来たかを活動を紹介しながら時系列に沿って進められました。講演会全体を通して、馬場さんのプロジェクトの仕掛け方はジャーナリスティックな目線で現代の社会を捉え、馬場さん自身の妄想をメディアにのせて発信することをきっかけに生まれていると感じました。またこの仕掛け方がプロジェクトのデザインにつながる一つの方法ではないか?と思いました。
馬場さんは取材という名の「魔法の絨毯」にのりながら、多くのまちに足を運び、勉強を重ねていたそうです。その当時の取材中のこと、ロサンゼルスで廃墟が子供達のワークショップギャラリーになっている事例を見て、
「ピカピカに整えた空間だったら子供たちはこれほど自由だっただろうか?
半分仕上げて半分仕上げていないこの空間が次の時代の美しさかも」
と思ったそうなのです。
↑画像:講演中のスライド/ロサンゼルスの廃墟をワークショップギャラリーにした事例
私はその言葉にすごく惹かれました。
私たち若者は未完成のものに魅力を感じると私は思います。
以前は不十分であるから自分たちでより良い空間にしようと足りないものを補っていたかもしれません。しかし現代の社会では利便性を追求した結果、不自由がないように与えられすぎてしまい逆に人々は自分自身で何かを生み出すことに特別感を感じ、魅力を感じているように思うのです。
また馬場さんは「情報の発し方で価値が変わる」とおしゃっていました。
↑ 画像:馬場正尊さんが運営する東京R不動産のサイト
不動産の会社ではあまり見られない言葉使いに注目!
(https://www.realtokyoestate.co.jp/より)
確かに今の時代では、スマートフォン1つ持っていれば誰でも社会に簡単にどんなことでも発信できてしまいます。逆に言えば、誰でもその発信されたものを見ることができる時代なのです。その中で大事になるのは特異性だけでなく、どれだけ人に共感を得ることができるかを工夫し発信しなければいけないと感じました。
また、馬場さんの現代の捉え方は今和次郎の「考現学」から来ていると話がありました。馬場さんの著書を読んでいると、本というメディアを使い、常に現代の社会を可視化しているように感じます。内容は様々な事例について事細かに分析(=取材)し、そこから課題解決の方法を言語化しているような内容になっていると思います。常に現代の社会はどのような状況に置かれているかを把握するということはとても大切だと感じました。
そして、紹介の中にあった東京不動産から発信された「after コロナの考現学」もまた、現代の社会を捉えつつ妄想を可視化し発信することでまた新しいプロジェクトが生まれるのではないかと感じました。
↑画像:公共R不動産で掲載の記事
(https://www.realtokyoestate.co.jp/column.php?n=1272より)
これからの都市については、
「社会実験が流行る。仮設的な建築がパーマメントな建築に影響を与える。」
という話がありました。確かに今の街中ではいたるところで社会実験の取組が見受けれられます。私は下北沢の線路街空き地や横浜のコタツでシネマのイベントの事例が頭に思い浮かびました。今まで仮設的な建築は緊急事態の処置として建てられるようなイメージでありましたが、仮設的な建築(=社会実験)は妄想を発信させる3Dのメディアではないかなと感じます。
最後に馬場さんは、マイクロなもの(少数だけど魅力あるもの)を察知する力が高いと感じました。そして馬場さん自身が察知したものをうまく発信するからこそ、多くの人が興味を引き付けられるつけられるんだと思います。私たちもまた、今回この講演会でその馬場さんの発信する力に心を奪われ、強く興味を引きつけられました。
↑画像:講演会の様子