【南房総インタビューvol.4】館山での農業~安西農園 安西淳さん~ Part2
ーーーー安西さんは生産とは別に、NPO法人南房総農育プロジェクトも一緒にやられていますが、それについてお伺いしてもよろしいでしょうか?ーーーー
きっかけとなった「みずほの村」
安西さん:農業のブランディングができてくると、次に自分の流通が欲しくなったんだよね。きっかけは、茨城県のつくばにある「みずほの村」と言う直売所があって、そこは年間数億円売れている直売所なんだ。そこに視察に訪れたときに、駐車場には福島からも埼玉からも東京からも、いろんなところのナンバーの車がたくさん止まってて、わざわざお客さんが足を運んできてたんだよね。そこの社長さんが言っていたことなんだけど、これからの時代は、今までの価値観にとらわれずにいろんなことをチャレンジしていくような人が大事だ、みたいなことを言ってたんだよ。そこは新規就農の研修のシステムも充実してた。あと1番すごかったのが、きゅうりが100円で売っていたとすると別の農家さんが後からきゅうりをそこで販売するときには、101円以上で売らなきゃいけないっていうルールがあるんだ。つまり直売所の中で、安さを競う価格競争じゃなくて、それぞれがクオリティーを上げようとする品質競争が起こるようになってる。今の南房総の直売所は完全に安売り合戦になっちゃってる。でもここの直売所はどんどん良いものを売って価格を上げていく、という方式でやっていて素晴らしいなと思ったよ。当時は1500万くらい売っている農家さんもいたね。すごいよね(笑)その直売所を見てほんとにセンセーショナルだったんだよね。
「百笑園」、NPOへの広がり
安西さん:それで自分も流通を作りたいと思って「百笑園」って言う直売所を始めたんだ。まぁいろいろお金がかかって家族に怒られたんだけど(笑) その後自分の流通ができると、今度は商品を集めなきゃいけない、横のつながりが欲しい、そうい所から農育プロジェクトが始まっていった。南房総を盛り上げるにはやっぱり1人じゃ限界がある。NPOを作って食育、南房総の農産物の良さをみんなで広めたいなぁって考えたんだ。それに、農育プロジェクトをやり始めたら、さらにたくさん売れるようになるということになれば魅力だなぁと思ったんだ。NPOの特徴は理事長を順番で回していくってところかな。理事長以外のメンバーもモチベーションを保てるように、そして理事長を降りた後もやる事は一緒だよっていう考えてでやってる。
ーーーー次の質問ですが、先ほど農地を守りたいと言うようなお話もありましたが、農業の担い手の問題についてどう考えていますか?ーーーー
国内の農業従事者はまだまだ増やせる
安西さん:基本的に今まではいわゆる世襲制みたいな形で農業はやられていたと思うんだけど、それがだんだんIターン現象、新規就農と言う形で南房総で農業をやりたいと言う人が増えてきてる。でもそういうケースはほんとにレアだよ。それだけに頼っているだけじゃぁ労働力は担保できないと思う。おれの中では国内でこれから農業に従事したいって考える人は少なくないと思うんだよね。最近の館山だと、2地域居住で土日は館山にきてる人も増えてる。そしたら土日に農業をやれば、年間で100万円以上稼げることができるんだよ。後はおれの中では障がい者雇用っていうのが農業にまだまだ入っていけると思ってる。障がい者の方の中には単純作業を得意とする方もいるし、農業には入り込みやすいんじゃないかな。あとはおじいちゃんおばあちゃんていうのは元気な人もたくさんいるよね。今は80歳になってやってる方もいらっしゃるよね。今までサラリーマンをやってきて60歳で定年迎えて、これから何をやろうかなぁって考えてるような人はぜひ農業をやってほしいね。そうやって考えただけでも割といろんなところにパイがあるんじゃないかな。しかも今は農業も機械化が進んでるから、最初の先行投資はかかるけど、女性の今後の農業進出も期待してる。だから自分の口の中に入れるものの話なんだから、もっと農業に興味を持ってもらえるようにしていかないといけないんだよね。
小さな規模の農的生活の可能性
安西さん:例えば自宅の庭に、 3株ミニトマトを植える、1、2ヶ月はそのミニトマトを食べ続けられるわけだね。そんなのも農的生活の1つだよ。だからおれの担い手の考え方だと、がっつり何ヘクタールも土地を持ってやってもらう人だけじゃなくて、小さな規模の農的生活、農業者を見直していけば、絶対にいまみたいな不安感はなくなっていくと思うんだよね。我々農業者の中では耕作放棄地っていうのが問題視されてるんだけど、農業者が減らなければ耕作放棄地なんて存在しないんだから(笑)みんなが100%農業に従事しなくたって農業に関わることはできるよ。俺だって毎日6ヘクタール同じ畑見てるわけじゃないから。週一回、二週に一回見る畑って割り振って回してるからそれだけできるわけ。だから1週間のうちの2日農業に従事するだけでも十分にできる作物ってたくさんあるんだよ。
台風15号、19号、21号の影響
安西さん:台風15号でうちの瓦もとびました。瞬間最大風速60メートル以上も吹いてたんだよね。台風15号は完全に”風台風”で農産物はゼロになりました。それにビニールハウスが風で8割がたやられたんじゃないかな。その次に台風19号が来て、今度は海からの風の塩害がすごかった。台風15号の風の感じから、たくさんの農家がビニールハウスのビニールを切って骨組みを風から守ろうとしたんだよね。ただそれが大失敗で、農産物がたくさん溶けちゃったんだよね。21号は風はたいした事なかったんだけど、雨がすごかった。普段水のたまらないところが、12月の初旬まで水が溜まったりしてた。ただ台風に関しては、農家は想定内の出来事で普段ならリカバリーする能力ももってる。だけど今回の台風が特別大きすぎたんだよね。農業はいろんな気候の影響もろに受けるしたくさんの弊害を受ける。良いものを作るためにはそういう弊害をいかに1つずつ減らしていくかって言う減点法で考えていかないといけないんだなって、今回の台風で改めて思ったよ。
ーーーーたくさんのお話ありがとうございました。マルイという大手百貨店での経験に基づく農業のはなしから、これからの日本の農業についての可能性にかかるはなしまで、幅広い貴重なお話をきくことができました。自分たちも収穫体験してみたいです!みなさんもぜひ安西農園に足を運んでみてください!ーーーー
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